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【WEB版】異世界に召喚されなかったから、現実世界にダンジョンを作ってやりたい放題  作者: 日富美信吾


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81:光り輝いてみた


 田助は先日、『資金殲滅不動要塞ゴールドミリオン・フォートレス』という名の、金に物を言わせたダンジョン攻略をしてみた。


 あれはあれで面白かったが、やはりダンジョンは己が信じる相棒とともに堪能してこそ。


 そう思った田助は、真・断ち切り丸を手に、改めてダンジョンを堪能し、その思いを強くした。


 そしてこう思ったのだ。


「相棒、お前をもっと輝かせてやるぜ!」


 と。


 異世界ストアで購入した武器に浮気したせいで、相棒が拗ねたことによるご機嫌取りでは、決してないので勘違いしてはいけない。


「浮気は駄目ですよ?」


「……はい」


 なぜか衣子に言われた。


 あと、笑顔なのになんか怖かった。


 それはさておき、田助はアイテムボックスから、プリズム・ゴーレムを倒したことで手に入れた『プリズムコア』を取り出した。


 虹色に輝くこの素材を合成すれば、真・断ち切り丸は間違いなく最強になる!


 ……はずである。


 というわけで、そのための強化プランを実行に移すべく、田助は衣子とウェネフを連れて、久しぶりにあの場所へと向かった。


 変態鍛冶師、六巻伍郎の工房だ。


 アンファとシャルハラート、それにポチは留守番である。




「ここがそうですか」


 衣子の言葉に、田助は頷く。


 だが、到着した工房の前には、場違いな黒塗りの高級車があった。


 そしてその周りには、いかにもその筋の人間であると全身で主張しているガラの悪い男たちがたむろしていた。


「これが普通……のわけないわよね?」


 ウェネフの呟きに田助が同意した時だった。


 工房の中から悲鳴が聞こえてきた。


「この工房は先祖代々の大事な場所っす! 絶対出て行かないっす!」


 六巻の声だ。


「借金のカタにここはもう俺たちのモンなんだよ! さっさとハンマー置いて出て行けや、このゴリラ!」


 怒号とともに、ガシャン、と何かが倒れる音がした。


「田助様」


「タスケ」


 衣子とウェネフに、「わかってる」と田助は言って歩き出す。


「久しぶりに来てみたら、ずいぶん賑わってるな?」


「山田さん!?」


 六巻に田助は片手を上げて応じる


「あぁ? 誰だテメェ、怪我したくなきゃ……」


 男の一人が田助の胸ぐらを掴もうと伸ばしてきた手を掴み、見様見真似の一本背負い。


 あっさりと投げ飛ばされた男はもちろん、周囲の男たちも呆気にとられている中、田助はアイテムボックスから現金を取り出す。


 虚空から突如現れた札束の山。


 帯封がされた一千万円の束が五つで、計5000万円。


 理解不能な出来事の連続に男たちが言葉を失っている。


 だが、それがどうした。


「これで足りるだろ。さっさと失せろ」


 田助が告げれば、高級車の後部ドアが開き、中からいかにも男たちのボスといった風体の中年の男が降りてきた。


 サングラスをかけ、葉巻をくゆらせている。


 男は地面に転がる札束と男の関係者を一瞥し、田助に向かって言った。


「……利子がついてるんだよ。一億だ」


「嘘っす! 元金と合わせても5000万で足りるはずっす!」


 六巻の叫びに、田助が「だそうだが?」と男を見る。


 威圧スキルを使ったわけではない。


 ただ、レベル170を超えている田助である。


 生物としての格の違いを男は感じ取ることができたのだろう。


 その額から、だらりと冷や汗が流れ落ちた。


「……計算違いだったようだ」


「計算違い?」


「……いえ、自分の勘違いでございました!」


 急に敬語になった男は、気絶した関係者を引きずり、慌てて車に乗り込んだ。


「おい、金、忘れてるぞ?」


「迷惑料ということで納めていただければ……!」


 言い残して、車のタイヤを軋ませながら、逃げるように去っていった。


「……いらないって言うならいいけど」


 田助が現金を再びアイテムボックスに収納していると、


「や、山田さぁぁぁん!」


 六巻が涙と鼻水を垂れ流しながら、地面を這うようにして抱きついてきた。


「一生ついていくっすぅぅぅ!」


「あ、おい! 離れろ!」


「嫌っす! 絶対離さないっす!」


 何とも嫌な再会になってしまった。




 気を取り直して、田助たちは六巻に導かれて工房の中に入った。


 そこで今回の訪問理由を切り出した。


「六巻、相棒を進化させたいんだ」


 そう言って田助が、真・断ち切り丸と、虹色に輝くプリズムコアをアイテムボックスから取り出した。


 六巻の目はプリズムコアに釘付けだ。


「拝見するっす!」


 六巻はプリズムコアを手に取ると、砕け散った断ち切り丸の時、そうしたように、どこからか取り出したビニール袋に入れて、


「ね、ねえ、あの人、クンカクンカし始めるんだけど!?」


 ウェネフが田助の服の裾を引っ張る。


「あ、次はペロペロ舐め始めた!? ねえ、どういうこと!?」


「変態なんだ、あいつは」


 田助が告げれば、


「違うっす。変態紳士っす。キリッ」


 六巻きが応えた。


「……うん、これは自分の知らいない鉱物っすね」


 相変わらず独特すぎる確認方法である。


「それに、たぶん、こいつは自分の炉じゃ加工できないっす。熱が逃げるっていうか、そもそも熱を受け付けない感じがするっすよ」


 変態だが、見立ては正確だ。


 プリズムコアは物理・魔法を反射する特性がある。


 通常の火で炙ったところで、熱すら反射してしまうのは間違いないだろう。


 だが、田助はニヤリと笑った。


「普通の炉なら無理でも、神話級の炉だったらどうだ?」


「神話、級?」


 首を傾げる六巻に対して、何かに気づいたみたいな顔をしたのはウェネフである。


「ご主人様、まさか!?」


「照れるだろ、そんなに褒め——」


「——てないから!」


 ウェネフに突っ込まれるが、田助は異世界ストアαを発動する。


 実は今回、相棒を進化させるにあたってプリズムコアを使用する際、何か便利な道具とかがあった方がいいんじゃないのかと考えた。


 六巻は変態紳士ではあるが、普通の人間。


 断ち切り丸を修復した時のように、ダンジョンで強制レベリングすることも考えたが、もっと手っ取り早い方法があるのではないかと。


 そして見つけたのが『レンタル』という項目。


 購入するには国家予算レベルの金額が必要な伝説級アイテムも、なんと一泊二日のレンタルなら、今の田助の財力でなんとかなるのである。


「『ドワーフの神話級・聖火炉(レンタル・一泊二日)』! さらに燃料として『炎の精霊王の瓶詰め』を購入!」


【購入手続きが完了しました】


 脳内に響くアナウンスと共に、工房の中にまばゆい光が溢れた。


「ああああああああああああ!?」


 ウェネフの絶叫は聞こえない方向で。


 光が収まると、そこには神々しい輝きを放つ、黄金の炉が鎮座していた。


 さらに、田助の手には、中で小さな太陽が燃えているかのような瓶が握られている。


「さあ、六巻! これで俺の相棒を最高にしてくれ!」


「了解っす! 自分の全てを注ぎ込むっす!」




 作業が始まった。


 精霊王の炎が炉に投じられると、工房内の温度は一瞬にして灼熱地獄と化した。


「ちょっと熱すぎよ!」


 ウェネフが悲鳴を上げながら、氷魔法で結界を張る。


「田助様、汗を拭きますね!」


 衣子は涼しい顔で、田助の額の汗を甲斐甲斐しく拭ってくれる。


 炉の中では、プリズムコアと真・断ち切り丸が、信じられないほどの高熱に晒されている。


 六巻は職人の勘と経験から、タイミングを見極め、その2つを取り出すと、ハンマーで鍛え始めた。


 何度も繰り返すことで、真・断ち切り丸とプリズムコアが融合していく。




 数時間後。


「できたっす……!」


 すっかり疲れ切った顔の六巻が、震える手でそれを差し出してきた。


 刀身はガラスのように透き通り、見る角度によって虹色に輝いている。


 ただの武器じゃない。芸術品の域に達している。


「ありがとう、六巻」


 田助は恐る恐る手を伸ばした。


 柄を握った瞬間、ドクン、と脈打つような感覚が伝わってきた。


 田助は高らかに刀を掲げた。


 その瞬間だった。


「うわっ、眩しっ!?」


 田助の全身が、まるでゲーミングPCのように、激しく七色に発光し始めたのである。


 赤、青、緑、黄色……目まぐるしく変わる極彩色の光が、工房内をディスコのように照らし出す。


「目が! 目があああああああ!」


 六巻が目を覆って転げ回る。


「何よこれ!? 光害レベルじゃない!」


 ウェネフが顔をしかめる。


 田助は慌てて鑑定を行った。


————————————————————————


 ●真・断ち切り丸【プリズムカスタム】


 変態刀鍛冶である六巻伍郎が山田田助の依頼によって鍛えられた逸品。


 切れ味は鋭く、切れぬものはなく、何ものにも砕くことは叶わない。


 ただし、装備すると呪われ、運の数値が劇的に下がる。


 また、抜刀中、装備している者は七色に激しく発光し、周囲の注目を強制的に集める。


————————————————————————


「なるほど。隠密行動ができなくなって、俺にヘイトが集まるわけだ」


 プリズムコアの性質が、呪いとして発現してしまったようである。


 だが、それがどうした。


 田助は、七色に光り輝く自分の体を見下ろして、ニヤリと笑った。


「これはこれでいいんじゃないか!?」


 この無駄な派手さ。


 意味不明な高機能。


「……敵に見つかりたくない時でも強制的に見つかるけどね。最悪よ」


 呆れるウェネフをよそに、衣子だけはうっとりとした表情で田助を見つめていた。


「素敵です田助様! どこにいても、どんなに離れていても、その輝きで私が見つけ出せますから! まさに愛の道しるべですね!」


「衣子、俺の輝きについてこれるか!?」


「もちろんです! どこまでもついていきます!」


 そんな田助たちを傍目に、ウェネフはやれやれとため息を吐き出すのだった。


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