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――14―― ドラゴンに対抗出来るのは

12/18加筆しました

 ドラゴンに対抗出来るのは魔法使いだ。

 リュカが、魔法使いが居なくては街はすぐドラゴンに蹂躙されてしまうだろう。多少の無茶も承知で魔法使いに戦って貰わなくてはいけない。頼らざる得ないのだ。兵士なんて無力なものだと、オーロルは痛感していた。


「そんな顔するな。俺は強いんだ」


 オーロルの頬を撫でるリュカの手は優しい。

 その手が離れることに一抹の不安を覚える。彼が凄腕の魔法使いだと、知っている。噂を聞いた。教えて貰った。疑うことなんか一つも無い。

 リュカと夜空を飛んだあの時、不安なんて一つもなかった。初めての空中浮遊だというのに、なんの心配もなく体を預けられたのだ。

 今だってなにも心配することはないはずだ。

 だけど……だけど、相手はドラゴンだ。この地上で最強の生物といわれている、生きた災害だ。

 リュカがいくら強くたって、もしもがないとはいえない。こんな不安を抱えたことに、オーロルは自分の感情に戸惑いすら覚える。


 ドラゴンに向かって空を飛んで行くリュカの眼差しは凍てつくように鋭く、口元の微笑みはどこまでも愉しそうだ。その顔はまさに『氷笑の公子』そのもの。

 リュカから放たれる氷はドラゴンを傷つけ、氷に閉ざしていく。

 氷の中は居心地が悪いのだろう。傷をものともせずドラゴンは暴れ、街にその爪痕を刻む。

 鋭い刃となった氷がドラゴンに向かい、稲妻がそれを追随する。炎がドラゴンの行く手を阻み、鱗を焼く。


 リュカの使う魔法は氷だったはずと、オーロルは思い出す。他の魔法使いも来ていたのかと辺りを見回し、リュカ以外魔法使いの姿がないことに気が付いた。

 通常、魔法使いが使える魔法の属性は一つだ。魔法に疎くてもそれは常識として誰もが知っている。

 増援の兵もなく、他の魔法使いだってまだ姿を見ていない。

 リュカが? と思うがそれはあり得ないと思い直す。

 氷柱が地面を割り、稲妻が鳴り響き、炎が舞う。毒霧がドラゴンを追い詰め、一体、二体と倒していく。

 その度にリュカからキラキラと煌めく破片のようなものが零れる。

 遠くから見る限り魔法のなにかだろうとしかオーロルにはわからないが、それはリュカの身を守るために付けている護符だ。


「オーロル! 殿下は?」


 駆けつけたマリユスとジルはオーロルの視線の先で壊れていく護符を気にすることなく魔法を放つリュカの姿に顔を青くする。

 リュカが氷属性以外の魔法を使う姿を見るのは久し振りだ。だが、久し振りだと言ってはいられない。

 どれだけ、マリユスは口を酸っぱくして他属性は使うなと言ってきたのだろう。

 ジルはどれだけやきもきさせられてきたのだろう。

 魔法使いとしてリュカは他の追随を許さない使い手であることは明白だ。誰もが認めている。

 だけど、魔法を使う事への負担は誰よりも大きい。

 じゃらじゃらとリュカが身に付けている護符だって魔法の負荷を軽くする為のものだ。他の魔法使いが使うような力を増幅させるようなものではない。


 ドラゴンが街に現れたと飛び出して行ったリュカへの不安が的中してしまったとマリユスは頭を抱える。オーロルが、彼女が居なければリュカがここまで他属性魔法を使うことはなかったのではと思っても仕方がないことだ。他人に責任を擦り付けたってどうにもならない。


 心配そうに瞳を揺らすオーロルに彼女を責める言葉を飲み込む。言いたい事は沢山ある。話しておかなかった後悔もある。

 リュカから逃れこちらへ向かってくるドラゴンを炎で囲む。


 リュカがドラゴンを逃したことに、警鐘が響く。


 リュカからキラキラと溢れるように落ちていた破片は少なくなり、消えたかのようにそれは無くなった。

 魔法の使い過ぎにより全ての護符がなくなったのだ。


「ジル! 殿下を……」


 マリユスは頭の中で響く警鐘が現実となって目の前で起きる状況に、言葉を失い、ジルは慌てて空へ飛び上がる。

 走り出すオーロルの腕をマリユスは掴む。彼女が行ってなにかが出来るわけではない。

 オーロルをドラゴンと魔法の渦巻く場へ行かせられない。ハッキリと聞いたわけではないが、噂が立つリュカの相手だ。オーロルになにかあっては一大事だろう。


 意識を失ったのか、頭を下に落ちてくるリュカに血の気が引いていく。


「リュカぁぁぁぁぁ!」


 オーロルの声が届く事はなく、落ちるリュカをジルは間一髪受け止める事が出来た。

 どれだけの魔法を使ったのか、リュカは眉間に皺を寄せ荒い息を溢す。


「魔法使いは王子だけじゃないんだよぉ」


 ジルの呟きにリュカは応えるように目を開け、そのまま意識を手放した。

 どれだけの心配をさせれば気が済むのか、ジルはリュカが生きて自分の腕の中にいる事にひとまずの安心を感じる。

 いつも氷のように心を閉ざすリュカがジルに身を預けるように気を失っている姿にわずかながら優越感が沸く。

 少しは自分らも頼って欲しいと、リュカへの文句を並べても意識のない彼に届く事はない。

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