混沌
痛みは私に真実を教える。
甘味は私を殺すリンゴでしかなかった。
血を吐くように見つけた日常に嫌気がさして、それでいて掴み続けた手は切り落とされた。
落ちる先は奈落ではなく、未来永劫廻ることのない世界がいいと願った。
そんな私は、今、暗闇から出ようとしている。
もう、終わらせるのだ。
こんなにも辛い世界にたった一つ残った私への光。
それは眩く、私の眼球を焼く。
身を焦がすほどの光は、人々に痛みを刻むが、最初から傷だらけの私にはすでに痛覚などないのだ。
そう思っていた。
だが、知ったのだ。
偶然という悪戯が、悪魔が私に囁いたのだ。
「この先ずっと、人がいなくなった場所で、君の願いをかなえる場所がある」
悪魔は目をギラギラとさせ、私を見ていた。
見えない口元は裂けるほど歪み、血を垂らしているのだろう。
私を陥れようと手ぐすね引いているのだろう。
そんなこと、分かっていた。
分かっていて、縋ろうとして、痛みが走る。
かつて失った手首からまた血が滴り落ち始めた。
切り落とされた手が踊る。
『もう片方の手も失うの?』
やけに甲高い声だった。
楽しそうに、ケタケタ笑い、狂ったようにリズムを刻む。
吐き気をこらえられずに、ぶちまける。
黒い塊が私から出てくる。
最後まで出し切れずに、喉につっかえる異物に息が出来なくなる。
意識が飛んでいく。
それでいいと思う自分が、抵抗する自分を包んでいく。
そんな中願った。
教えてほしいと、願った。