7-3 青年騎士と老元帥の握手
それからしばらくして、アレクサンダーの一行がやってきた。アレクサンダーは美しい聖剣を携えて、背筋をまっすぐ伸ばして歩いてやってきた。その頃にはもう、その通り一体の家の者はみんな目を覚ましていて、貴族や富豪の何人かはメアリが運ばれた家に集まっていた。
アレクサンダーは、メアリの大怪我に驚きの声をあげた。そして、雄弁に白の魔王の残酷さを人々に訴えた。
「長年自分に仕えてきた、こんなか弱い女性に対して、なんという仕打ちだ!奴には心というものがないのですよ!こんな残酷な化物をもうこれ以上好きにさせてはいけない!」
そうだそうだ、という声があがる。同じ使用人の立場の彼らの声には、激しい怒りがこもっていた。
「アレクさん、あなたならその白の魔王を倒せるんでしょう!早く倒してくださいよ!」
「もちろんです…明日、兵を率いて魔王の城へ向かうことにします。」
頼もしい青年の発言に、女たちはほっとしたようにため息をついた。
しかし、男たちはそれだけでは治まらなかった。
「アレクさん、私たちも一緒に戦わせてください!」
「そうです!もうこれ以上黙って見てられない!」
憤る使用人たちにアレクは驚いた。
「しかしフェトラ公国の民である皆さんを危険な目にあわせるわけには…公爵様にも許可をいただかねばなりませんし…」
「あんな腰抜け公爵のことなんざどうでもいい!ルーク・ダーリングとも親しくない仲じゃなかったみたいだし、討伐には乗り気じゃないんでしょう?それならあんたに着いていった方が!」
使用人の男たちはすっかり興奮している。上品な貴族たちも確かに、といった様子で頷いていた。
「だから俺たちにも戦わせてください!」
「……それほどまで仰るなら…。」
アレクが承諾しかけたその時。
「やめんか馬鹿者!」
戸口の方から、鋭い老人の声がした。
見ると、背筋をピンと伸ばした、ハルフォード元帥が立っていた。
「ハルフォード元帥閣下!」
周囲の人々は、貴族も含め恐縮して姿勢を正した。
「お前たち素人が手出ししたところで、ベルクール殿の足でまといになって、犬死するだけだ。ここは我々に任せるのじゃ。ベルクール殿も、どうかこの者たちを死なせてくださいますな。」
「しかし…長年主人の為に使えてきたのに、それを裏切られた仲間が傷ついたのを黙って見ていることなど、我慢できません!」
「愚か者。怒りに任せて暴徒になった烏合の衆など、戦においては何の意味も成さぬ。軍人に任せよ。……・というわけで、ベルクール殿。我々をあなたの軍団に同行させていただけませぬか。」
いきなり、老元帥はアレクに向き直って尋ねた。
「もちろん、我が国の人間が傷つけられて、我々も黙って見ているつもりはございません。どうか協力させていただけないか。」
「公国の軍隊なら頼もしい限りですね。よろしくお願いいたします。」
アレクは綺麗な笑顔を見せ、優雅に元帥に向かって右手を差し出した。
老元帥と青年剣士は、固い握手を交わした。




