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魔王とプリンセス  作者: 藤ともみ
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2-6 公爵家のパーティー  アーニャ・ハルフォード

 フェトラ公国の主である、アーク公爵家のパーティーには相変わらず国中の重要人物が集う。名だたる貴族たちはもちろんのこと、公爵が呼び寄せた、世界的な芸術家や科学者なんかも沢山集まっている。

室内では暖かく豪華な料理が振舞われ、音楽団による優雅な演奏が流れている。屋敷の内装は、派手すぎず、しかし華やかなもので、非常にセンスが良い。

中でも、壁に飾られている絵画は、外国から集められた世界的な芸術品ばかりで、どれも非常に素晴らしい。

 それらの絵画コレクションの一つ……生まれたばかりの赤ん坊が母親に抱きかかえられて、髪の祝福を受けている、慈愛に満ちた絵……に、ルーク・ダーリング様は見入っていた。

ああ、パーティー会場の綺麗な令嬢たちの熱い目線にも気づかずに、一心に絵を見つめているお姿はやっぱり素敵だわ……、と、私はうっとりしてしまう。紅色の布地に、銀糸の刺繍があしらわれた礼服は、ルーク様によく似合っていてとっても素敵。来乗客の貴族たちにペコペコ卑屈に頭をさげている父や、料理にばかり食らいついている兄とは大違いである。

突然、人だかりが左右に割れた。

人が開けた道の向こうから、初老の男性がにこやかに笑いながらこちらにやってきた。こちらのアーク公爵家の主人であり、フェトラ公国の国主である、アーク公爵様だ。

「やあ、ダーリング。よく参ったな。」

白髪は所々混じっているが、表情はまだ若々しい。とても今年で五十四になるとは思えない。

「パーティー嫌いの君が来てくれるとは嬉しいよ。」

「公爵家のパーティーとあっては、行かないわけにはいかないでしょう……それに、あなたの家にある絵画を見るのは楽しみですから。」

「できれば、他の方々との交流も楽しんでもらいたいんだがね……ほら、さっきから君のことを熱心に見つめているかわいいお嬢さんもいらっしゃることだし。」

 公爵様がいきなり私の方へ目線を向けるので慌ててしまう。

「もう公爵様、あまりからかわないで下さいまし!」

 ハハハすまんな、と、全然すまなそうじゃない様子で公爵様が笑う。お爺様が、この公爵様が子供の頃から仕えていたよしみで、孫の私も公爵様とは顔見知り以上のお付き合いがある。父の代ですっかり落ちぶれているとはいえ、こればかりは、旧家ハルフォード家に生まれた特権だと思う。

あら……公爵の後ろにいるのは、アレク様?こちらの国に来てから仕立てたか借りたかしたのだろうか、深い緑色のビロードで出来た服をまとっている。甲冑姿は凛々しかったけど、パーティー用の礼服をまとった今夜のアレク様は、本当に優雅で、いかにも貴族の御曹司、といった感じでとっても素敵。

 そしてその後ろには、ヒゲをそり、髪をきれいに撫で付けたオットーさんが付き従っている。こちらも会った時とは全然違う、貴族らしい服装、なんだけど……オットーさんはどっちかっていうと軍人らしく見える。

「紹介するよ、ダーリング。こちら、アレクサンダー・ベルクール殿だ。」

「おや、君は…」

「ダーリング殿。先日はどうも。」

黒髪に青い目のルーク様が驚いたように、金髪碧眼のアレク様を顔を見つめる。それに対してにっこりと優雅に微笑むアレク様。絵になる貴公子二人が向かい合っているものだから、本人たちは気づいていないけど周りの貴婦人たちの目線とざわめきが大変なことになっている。

「なんだ、もう知り合いなのかね。」

「ええ、先日妹を助けていただいて……。」

「いやいやその節は……あれ、サラ様はご一緒ではないのですか?」

えっ、アレク様、なんでサラのこと気にしてるの。

「……あの子にはまだこういう場は早いと思ったものでな。」

「そう、でしたか……。」

 少し残念そうに言うアレク様。え?なになにまさかアレク様、サラのこと気になってる?わお

めっちゃチャンスじゃんサラ!

「おや、あなたはハルフォードのお嬢様。……えーと」

「アーニャ、と申します。アレク様。先日はお助けいただきありがとうございました。」

クリーム色のドレスの裾を広げて、私は優雅におじぎする。うーん、私の名前は覚えてくれてなかったのか……ちょっと残念。

「実はアーク公爵に、ダーリング家がこの国の有力な貴族だとお伺いしたものですから……率直に申し上げましょう。本日は商談を持ってまいりました。」

「ほう……何か?」

「……あまり大人数の前では、ちょっと。」

 アレク様が急に声を落とす。……ん?なんだかあまり穏やかな感じじゃなくなってるわ。

「ダーリング、別室に移動してもらえるか?」

「……承知いたしました。セリアを連れてもよろしいでしょうか?」

「もちろんです。私もオットーを連れておりますし。」

「うむ、ではあちらへ。」

 そうして、アレク様とルーク様が連れ立ってそそくさと別室へ行こうとする……んだけど、あの、お二人とも嫌でもご婦人方の目をひいてしまっているんですが……。

 と、突然、それまで室内を流れていた弦楽四重奏の演奏がピタッと止まり、トランペットのファンファーレが鳴り響く。

 驚いて皆がトランペットの音がした方を向くと、ひな壇に公爵家の筆頭執事が現れて、これから公爵が挨拶を述べ、乾杯に入る旨を話し始めた。

 もったいをつけたような話し方は……、もしかしてお二人への注意をそらすために、わざと?

 そう気がついて、私が辺りを見回した時には、アレク様とルーク様、そしてオットーさんが消えていた。セリアさんは……、たぶん最初からいたんだろうけど、影からルーク様を見守っていたのか、最初からパーティーに参加していたのかどうかさえわからない。取り敢えず、今は会場にいる様子は無さそうだ。

 そしてひな壇では、公爵様が、何事もなかったように乾杯の挨拶を述べ始めた。



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