表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
反逆  作者: あきら
4/5

4部

「ラズ・・・た・・・カレンちゃん・・を・・」


ノイズが混じった通信だった。キツネの方のラズからだ。カレンが首を傾げてこちらを見ている。その時だった。世界が白に光に包まれた。音が聞こえる。窓ガラスが割れる音。建物が倒れる音。爆発音。悲鳴。カレンが泣いている声。

泣き声がする方を見る。画像がちらつく。カメラが故障している。人影が見える。視界が黒い。赤い。すぐ側にいたはずの少女の元へ急ぐ。


「カレンちゃん。カレンちゃん。」


泣き声が止まない。怪我。病院。電話。繋がらない。地図。カレンを抱き抱えると外に出た。記録していた建物がない。道が無い。方角はあっているはずだ。人の姿は無い。

病院の方へ歩いた。カレンの泣き声が小さくなっている。うた。この前、うたっていた歌を再生する。ノイズが入る。


「ラズ・・・。うた。へた。」


繰り返し再生する。歩き続ける。

病院だ。人影。しかし、返事はなかった。

次の病院を検索。歩く。歩き続ける。人影が見える。一つ。二つ。人影は増えて行く。話しかけても返事はない。みんな同じ方へ歩いて行く。地図を検索する。川?

最優先事項。病院。再び歩く。歌を再生する。

病院だ。人影がたくさんある。みんな座っている。


「怪我しているんです。助けてください。」


何人かがこちらを見る。しかし、返事が無い。


「カレンちゃん。もう少しです。お医者さんに見てもらいましょう。」


短い沈黙。


「ラズ・・・。変な臭いがする。あっち・・・行きたい。」


カレンが指差す方へ歩く。しばらく歩いた。広い場所。公園だ。

人影が集まっている。


「さあ、みなさん。主に祈りましょう。愚かな者達はメギドの火によって、粛清されました。生き残った私たちは選ばれたのです。、主の千年王国へ行くことができるのです。さあ、祈りましょう。」


歓声。


「ここ・・・うるさい・・・あっち。」


カレンが指を指す方角を検索する。離れているが病院がある。歩く。


「ラズ。うたって。」


歌を再生する。カレンが笑った。目を閉じた。歩き続ける。

警告。体内の電力が少ない。役に立たない視覚を切る。外部との通信を切る。行動の記録も切る。歌は再生し続ける。カレンが起きた時に寂しくないように。聴覚は残す。カレンの声を聞き逃さないように。

歩き続けた。ただ、まっすぐ。歩き続けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ