受容
「##########」
「####」
「#############」
2度目の目覚めは視覚より前に聴覚に情報が
伝達された。といっても何一つとして
聞き取れていない。
少なからず5人は人がいるはずだ。
大人の男女が1人ずつ、高校生くらいの男女も
1人ずつ。あとはその誰でもない泣き声。
おそらく、そこに俺の知る人はいない、
日本人ですらない可能性が高い。
もう気絶してはならない。
(いくぞ…)
覚悟を決めて目を開けると、予想通り
そこにいたのは5人で、誰1人見たことがない。
彼らは俺が目を覚ましたことを認識すると
互いに抱き合って喜んでいた。
その中で、おそらく自分と同い年くらいであろう
青年が抱きついてきた。
「####################?
##############!」
おそらく心配や喜びを伝えてくれているはずだが、
言語の壁により何も伝わらない。
知らない場所、人、言語で既に気絶寸前だったが
面白いことに気がついた。
(なんて言ってるのかわかるぞ…!)
音としては全く理解できないが、
喋っている意味は脳に流れ込んでくる。
これに似た感覚があったことを思い出す。
(英語と同じだ!)
日本語に変換するのは難しいが、脳内でその
言語をその言語を用いて理解できている。
「ちょっと、急に抱きついたら危ないでしょ。」
大人の女性が青年に注意する。
(うおぉ、わかるぞ!)
急に姿を現した活路に俺は興奮する。
青年が少ししょぼくれた顔をして俺から離れた
ので、意味もあっているようだ。
今度はこちらから話しかけてみよう。
「あの、すみません。ここってどこですか。」
相手がポカンとする。
俺もポカンとしていた。
俺の口からでたのは日本語だった。
(あぁ、クソ!これどーすりゃいいんだよ!)
ジェスチャーで意思疎通を試みるが、
どうも上手くいかない。
周りの人達はなにやら話し合っているが、
小声で話しておりよく聞こえない。
ひと段落ついたのか、一番大きな男が部屋を出た。
その後再び毛布をかけられたので、
また寝ていろということかと解釈して再び
俺は目を閉じた。あわよくばこのまま
学校に戻れないかと願いながら―
―さい。」
(、、、?)
―ください。」
(これは、日本語、、、?)
―起きてください。」
あまりに流暢な日本語に驚き、思わず飛び起きる。
(俺は学校に戻れたのか?)
しかし、目の前にいたのはまたもや見たことのない
男だった。だがどう見ても日本人ではない。
でも、この人なら通じるかもしれない、、、!
「あの、ここってどこかわかりますか?」
男はゆっくりと頷いた。そして口を開く。
「アジル王国の南西に位置する、サド村です。」
日本語で意思疎通が可能であるという事実に
喜んだのも束の間、ここが聞いたこともない国だと
知り、再び不安に襲われる。
「えっと、、、何大陸ですかね。」
男は驚いたような顔を見せる。
「サストス大陸に決まっているでしょう。」
(、、、?)
聞いたこともないような大陸名が出てきて焦る。
それっぽい発音の大陸もない。
ならここは一体どこなんだ?
俺が困惑した表情を見せていると、
男が再び口を開いた。
「あなた、おそらくここの世界の人じゃない
でしょう。少なからず、記憶喪失ではないと。」
「ここの世界」という言葉で気付かされる。
というより元から考えてはいたが、
そんなことあるはずないと思考していなかった。
自分の知らない体、聞いたことのない言語、
知らない国、知らない大陸。
(俺は、異世界にきちまったのか、、?)
一度そう仮定して考える。
となるとおそらく起きて最初にいたのは
家族だろう。今思えば男もこの体のとよく似た
深緑の髪をしていた。
なら、文化のレベルは?
ぱっと見は中世ヨーロッパの様な雰囲気がある。
しかし当時にパラレルワールドや異世界といった
考え方を大真面目に考える人間はいたのだろうか。
俺が言語を理解できてるのはなぜだ?
体が覚えているのか?それとも他の要因が?
分からない。
ただ何より分からなかったのは目の前にいる
男の存在だった。先ほどの言葉で日本人でない
ということは分かった。なら何故日本語を
喋っているんだ?もしかしたら俺と同じで
先にこの世界に来た日本人なのか、、、?
とりあえず質問してみる。
「何故日本語を喋れるのですか?」
男が答える。
「日本語、、、というのはこの言語のこと
で良いですかね。何故といわれても、、、、。
私は通訳師ですから。」
何故こいつは日本語が分からないんだ?
通訳師ってなんだ。通訳者とどう違う。
そもそも日本語の通訳ができるなら
日本語を認知しているはずだろう。
「日本語を認知していないのに
なぜ日本語を喋れているんですか?」
「だから私が通訳師だからですよ。」
「通訳師って何ですか?」
「そうか、職業についての知識も
抜けているんですね。説明します。
通訳師は魔法により相手との意思疎通を
可能にする職業のことです。」
(、、、、?)
まて、今通訳師とかよりよっぽど重要な
ワードが出てきたぞ。魔法、、、?
てっきりパラレルワールドとか、
ただ歴史が違うだけの別世界の話だと思って
いたが、どうやら違うらしい。
完全にファンタジーの世界だ。
「魔法、、、というのは?」
「なんと!あなたのいた世界には魔法が
なかったのですか。なるほど、魔法のない世界
など考えたこともなかった。」
魔法がないってそんなに変なことなのか。
俺はその後にも男に色々と質問をして、この
世界への理解を深めていった。
やはりここは異世界、しかも
ファンタジータイプのものらしい。




