清冷の守り譜4
「我が国には、そのような力の使い手はおらん」
「ですが、調査だけでもさせていただけませんか?
事前に調べただけでも疑わしい場所はこの国だけなんですよ」
「例え、月の国の者でも、我ら太陽の国の内情に口を出さない約束だが?」
「確かに、私は月の国の出身ですが、今はギルドからの要請でクラン【天空】からの調査・派遣できています」
「ギルドだろうとクランだろうと関係はない。帰ってくれ」
無言で睨み合う2人の背後から翔歌が声をかける
「あの…」
「なんだ、今、交渉中なんだ少し待っ……」
「あ、あの!
聴こえました!!」
陣の言葉を遮るように翔歌は声を張る
「…なんて聴こえた」
「“こっち”って言ってました」
「は?」
なんだ、それは。というような目で翔歌を見下ろす陣の耳にさらに意味のわからない言葉が飛び込む
「ね、ね。翔歌ちゃん、向こうの方からなんか“匂い”するよ?
不思議な匂い!!」
「「「に、匂い?」」」
「んー、なんだろ
魔法かな??」
何故普通に会話を続けるんだ、と言いたかったが、この2人に関わっていたら話が進まないと思った陣はため息を一つついてから再び長に向き直る
「この2人の言うことが本当であれば、あなた方が何かを隠していることは明白です。もう一度、お聞きします。
“心当たりがあるなら教えてください”」
少し強めに出ると一瞬だけ言葉に詰まったがニヤリと口角をあげた
「ならば、勝手に探せば良い
ただ、日没までに何も見つからなければその時は、諦めて帰ってもらおう。
いいな?」
陣や秋は2人に目で合図を送る。
それを見て翔歌と煌牙は目を見合わせると頷くと「まかせて!!」とグッドサインを送る
「寛大な配慮をありがとうございます。
日没までに見つければよろしいのですね?」
焦らない事に加えて笑顔を見せる様子をみて訝しげな表情をする長を後目に指示を出す。
「風使い、ここからは、お前が指示しろ。」
「はい」
その言葉で翔歌は目を瞑る
翔歌の周りに風が集まりふわふわと服を舞わせる
“不思議で楽しい場所を教えて”と願いを乗せた魔力に風が応える
「“南西の方角”」
それだけ紡ぐと長の表情に多少の変化が見られるがまだ余裕があるようだ
絶対に見つからないという自信が見て取れる
「よし、行くぞ」
5人が進んだ方角には湖があった
「湖…、何もない、ですねー」
「風使い、本当にここなのか?」
「えっと…。風の声は、そう言ってます」
「……ならば、術か
何かを隠すなら結界術だな
だが、痕跡が無いとなると相当な術者、俺に解けるか?」
ブツブツと呟く陣の周りで何かないか探し始める4人
「ねぇねぇ、陣さん」
「ん?」
「アレ、なんですか?
大っきな木に何か貼って……」
「ほんとだー。一つずつ文字、ちがうねー」
「……よく見えるな…、あんな遠い場所の」
5人の位置からは遠く判別がつかなく翔歌が“何か”と言った事に対し、煌牙は“文字がそれぞれ違う”とまで答えた
「……ちなみに書いてある文字はわかるか?」
「んー、んと、ぐにゃぐにゃしててわかんない!!
あ、でもね“色”ならわかる!
【赤】【白】【青】【黒】で光ってる」
「ぐにゃぐにゃって……
まぁ、わからなくて当然か…伝令に使う術しか教えてないからな
だが、その4色なら【四神】の色だな
それなら結界符での封印術になるから呪符を破くなりすれば解けるな…。連携をしてあるのなら、一つずつ解除しても意味がない、
風使い、“同時に”攻撃できるか?」
「やってみます!」
小さな声で詠唱を始めると両手を広げ、力を集中させる
攻撃魔法を放つが何かに弾かれて魔法が光となり飛散した
「あ、あれ?
……消えた?」
「魔力無効の魔法具か?
となれば…、風使い、威力を上げろ」
「で、でも!」
魔法制限して放っていたのをわかっていたのか陣は威力を上げるよう指示をするが翔歌は威力をあれ以上に上げたら周りに影響が出るかもしれないと反論の意を示す
「大丈夫だ、お前のコントロールは浅葱部隊からの折り紙付きだ。
それに、風なら周りにそれほど影響も出ないはずだ」
魔法具を壊すなら、上回る力で制するのが1番だ。とも続ける
「ぅ~ー。
わ、わかっ…た!」
意識を集中させ、すぅっと息を吸い込むと長い詠唱を噛まずに紡ぐ
「《天空を翔ける風の精霊達よ、我の声に耳をすませ給え、我が声に応え給え、我願うは攻撃なり、我が手に集い、汝らの力で大気を震わせ、鋼鉄をも貫く形を成し、雨の如く降る矢羽となり我が望む方へ降り注げ!〈ウィンドアロー〉》」
空へ両手を上げてから一気に下へ降ろし魔法を放つ
放ったあと、少し呼吸の乱れがあったがすぐに立て直し結果を見る
成功したようで、パリンという音と光の粒子が散る
眼前に広がる湖の中心あたりにドーム状の防壁が一瞬だけ現れ頂点からすぅと消えていった。
消えた先のその中心には小さな社が浮かんでいる
社の四方には灯篭があり炎が灯りゆらゆらと風に揺れている




