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才能の器 ~素敵なスキル横伸ばし生活~  作者: とんび
第一章

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133 臨界


 湿原に一人立ち、ポゼッションを発動する。


「ふう……」


 この魔法は正直、もの凄い。


 小学生並みの感想ではあるが、得られる上位魔力の量と、それにより可能になるあらゆる魔法的行動の幅広さは、まさに全能感と言って差し支えないだろう。


 加えてこの魔法は、得られた上位魔力そのものを利用して、簡単に再発動できてしまうのだ。

 要は無限エネルギー、という訳である。


 この力にあぐらをかいていてはいけない、とそう思う。

 無限エネルギーであるからこそ、適当な使い方をしていれば、敵に付け入られる隙になってしまうだろう。


 それに恐らく……。

 このポゼッションと言う魔法は、目に見えないデメリットがあると思う。


 寿命とかそういう大それたものではないと思うが、上位魔力を扱うほどに、それが内側から俺を押し広げようとしてくる感触が凄くある。アウェイクンも自己意識を外界に押し広げる強化魔法ではある。ただ、それよりももっと根本的な何かが、ほんの僅かずつ変わっている。そんな風に思うのだ。


 もちろん、そうした感覚はあやふやなものだ。それをデメリットだと言ってしまうのは、もしかしたら無限のエネルギーと言うものに対する、俺の恐れが原因なのだろうか。


「とは言え、まあ……」


 俺は魔法の準備をしながら、一人ごちる。


 そうだ。

 もしポゼッションが俺の何かを変質させるものだとしても。

 必要ならば、使うことを恐れてはいられない。アルメリアやシータと話してきた「覚悟」を成すためなら、踏み込むべきところは踏み込まなければならない。


 多少のデメリットも消耗するリソースの一つとして捉え、それを使って十分な準備をする。

 そしてこの無限エネルギーを使った強力な力でもって、上から邪神の眷族を圧し潰すのだ。


「よし」 


 術式を完成させ、まず発動したのは小転移消滅ポータルバニッシュメントだ。

 この魔法は起点指定、つまり空間のある地点を俺が任意に指定して発動するものである。


 空間認識なんて機械でやるならともかく、人間の脳の処理だと結構曖昧だからな。

 ある程度使用感を掴んでおかないと、変な場所に発生させかねない。

 それに詠唱から発動までのラグ、そして連続発動にかかる時間も把握しておく必要があるだろう。


 そういう訳で、俺はポゼッションで何度か魔力を補充しながら、思い通りの場所にポータルを発生させる練習を行った。


 ポータルバニッシュメントが、中空にチカチカと明滅する。

 音も衝撃も無いからあんまり迫力は無い。が、あの光に巻き込まれれば、その部位は異界に飛ばされてしまうのだ。

 魔法耐性や魔法感知でどのくらい対応されるのかは不明だが、サイレントキルにも向いていそうな魔法である。


 発動については、術式さえ完成していれば、俺が「ここ!」と意識したところにほとんど即座に発生しているようだ。

 味方を避けて打つのは簡単だろうが、発生が早いから、俺が指定したところに突っ込んでこられたらキャンセルできなさそうだな。

 この辺は少し使い道を考えるべきだろう。


「じゃあ次だ」


 空間発動の練習をあらかた済ませ、次に極大魔力破マキシマイズ・エーテルフレアの準備に移る。


 まずはポゼッション一回分相当の上位魔力を込めてみよう。

 その次には、俺がこっそり開発した応用魔法の試し撃ちだ。


 マキシマイズ・エーテルフレアは、俺の並列思考のほとんど全てを導入して使用する。

 術式を複数の部位に分け、それぞれの部位を各並列思考が担当するこの方法を、師匠は統合起動インテグレーションキャストと名付けたようだ。


 俺個人の好みで言えば、このインテグレーションキャストはあんまり好きじゃない方法だ。

 戦闘素人の俺がズーグやトビーについて行けたのは、実は並列思考による思考力の余裕があったからだろうと思っている。その精神的余裕を、自ら失くしてしまう方法だからだ。


 もちろん、迷宮の試練や北方領域での戦闘を経て、俺も大分素人感は無くなったとは思う。戦闘に際して、いちいち精神的余裕が必要かと言われれば、そうでもない。

 ただその観点から見れば、今度は逆にこの「無防備を晒している感覚」が、結構耐え難いものになっている。要は周囲に気を配る、って意識配分ができないわけだしな。


 まあ結論として、「使うのがちょっと怖い」魔法なのである。


「ズーグやトビーにちゃんとガードしてもらうよう言っておかないとな」


 一発目の発動を終え、上空で爆発したマキシマイズ・エーテルフレアを見ながら、思わずそんな呟きが漏れた。

 何の危険もない場所なのに、ちょっと背筋が冷えるような気分だった。




 ======




「なるほど……防御役が必要なのですね」


 小休止でズーグの元に戻り、マキシマイズ・エーテルフレアの説明をすると、しみじみとした頷きが返って来た。


 これは何度かの試し撃ちで、この魔法の威力を体感したのが原因だろう。


 特に一回地表付近スレスレに打っちまった時は、フレアの魔力体に掠った地表がツルツルの表面になってたし。

 余波として発生する衝撃波も結構なものだった。上空で発動させた時にも衝撃波が来てたから、身構えられて吹っ飛ばされずに済んだが、地面の草とかはしっちゃかめっちゃかになってたからな。


 あれだけの魔法なのだから、それくらい弱点があってしかるべき。

 そういう反応のようである。


「まぁ、これから使うのは今さっきの比じゃないんだけどな」

「それが……言っていた内緒のやつですか」

「ああ。ポゼッション……あの大魔力を身に纏う魔法を連続で起動して、その()()()()()()()()()()()()()()、そういう魔法だ」


 俺の言葉に、ズーグが驚いたように目を見開く。

 そういう反応があると開発した俺としても鼻が高い。


 ……まあ、開発と言っても、既存の術式を組み合わせただけではあるが。

 それでも俺自身の発想で、俺自身で術式の内容を整備した魔法なのだから、開発したと言って相違ないはずだ。


「名付けて、多重装填・極大魔力破マルチプルロード・エーテルフレア。今からこいつに何発のポゼッションを装填できるかを調べる。当たればたぶん邪神の眷族でも瞬殺の威力だ。どうやって当てるのか、ズーグも一緒に考えてみてくれ」

「……承知いたしました」


 ズーグが頷くのを見て、俺は再び湿原の広い場所に移動する。

 

 そして一つ深呼吸。

 ゆっくりと脳裏に術式を浮かべ、まず一回目の神気憑依ポゼッション


 次に多重装填・極大魔力破マルチプルロード・エーテルフレアの発動を開始する。


 弾頭術式をもってポゼッション一回分の上位魔力を左手に装填。

 そこから右手で弓を引き絞るように射出術式を準備する。


 その状態で滞留させ、俺は次の神気憑依ポゼッションを発動させた。


「……ぐっ」


 荒れ狂う大量の魔力を制御し、二回目の装填。

 更に三回目の装填。


 四回目は、纏った上位魔力に粘度のようなものを感じた。

 水の中にでもいるように、周囲の音がぼやけて聞こえる。


 五回目には、弾頭術式を握りしめる右手が震え始めた。

 一層力を込めて、術式を制御する。


 六回目には、総毛立つ感覚。

 俺は意識と思考力を手放さないように、何度も深い呼吸を続けた。


行け(シュート)


 詠唱と共に、魔法が放たれる。


 それは地上から放たれた一筋の流星のように、途轍もない速度で逆しまに天に昇って行き。

 遥か上空で雲とぶつかって、小さな恒星のような光と共に、一瞬で果てて消えた。


「……ぷはぁっ、はぁっ」


 それを見届けて、俺はまるで息を忘れていたかのように大きく息を吸った。


 あれだけ意識を振り絞った割に、魔法の顛末自体はあっけないものだ。

 だがそれは、魔法の威力そのものを示していると言っていい。


 光が走るような速度で飛び、着弾。魔法が炸裂する速度も凄まじく、それはエーテルダメージ――つまり押しのけられるエーテル体と物質との齟齬によって発生する衝撃が大きいことに他ならない。


「ただ……これなら三回分くらいでもいいかもしれないな」


 俺は手を振って近寄ってくるズーグに手を振り返しながら、そんなことを考えていたのだった。


なお同行の竜人二人は怯えて近寄ってこない模様


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これメドロー……いやなんでもないです
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