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第809話


 「いーやーだー!!! 何でだよぉぉぉぉぉ!!!」



 俺は逃げようとしたところを四人がかりで引き止められていた。


 こいつら、腕を上げたせいか的確に捕縛してきやがる。

 何てこった。

 まさかこの俺が自分の首を締める事になるとは。

 いや、それ以前に、まじで逃げたい。


 そう思って逃げようとするが、部屋で暴れるわけにもいかず、俺は引き止められていた。




 「大人しくしなさいぃぃぃ!!!」


 「わがまま言うなんてらしくないですよケンくん!!」



 ミレアとリンフィアは腕を引っ張りながら俺にそう言った。

 確かにらしくはないかもしれない。

 しかし、嫌なものは嫌なのだ。




 「ししょおおおおおお………おちつけぇぇ………」


 「逃げるなこの戯けが!! なんでそこまで抵抗する!?」




 そうラビとニールに言われたので、俺はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりにピタリと止まり、必死な表情でこう言った。




 「執事ということはつまり………敬語だったり所作が必要な仕事だ。つまり!! 見も知らねぇ連中に、頭を下げなきゃいけねンだ!! いっ………いやだ!! 俺は誰にも、頭を下げたくねぇ!!」


 「おいこいつ斬っていいか?」




 辛辣なニールを横目に熱弁する俺。

 あれやこれやと色々言ってみる。

 そう、ぺこぺこしたくないのだ。

 悪い事をしたら謝る。

 まぁそれはいい。

 こちらに非がある。

 一本筋を通すのは、人として当然だ。


 であるがしかし、別に尊敬してる訳でもなければ大した奴でもないなのにこちらが謙るのは無理だ。

 そういうシステムとしては理解できる。

 年功序列や身分制度は、あれは無秩序状態を防ぐために存在するのだ。

 しかし、しかしだ。

 冷静に考えて、何故年齢が上なだけでそこまで威張れるのだろうか。

 なんなら老いている分、生物としては劣等だ。

 実力で勝負せんかイ。






 だが、





 「ダメですよ。ケンくん」





 と、低めのトーンで詰め寄るリンフィア。

 わかる。

 これは許してくれないやつだ。




 「約束は守ってください。女の子の楽しみを奪った罪は重いのです」


 「ぐぉぉぉっぉぉぉぉぉぉ!!!!」














——————————————————————————————













 説得の末、俺は渋々ミレアについていくことになった。



 仕方ない。

 これはあくまでも演技。

 謙って見えているだけ。

 そう、これは幻覚だ。

 と、思い込んでおこう。



 さて、いい加減頭をリセットして冷静になろう。

 結局俺は執事として働かされる事になる。

 こればかりはもう仕方がない。




 「つか、なんで実家に呼ばれてンだよ。過保護か?」


 「いえ、私の家は基本するべき事さえすれば、後は放っておかれます。だから基本、学院長が親みたいなものです。

両親は親と言うより秩序のような存在ですから」


 「秩序ねぇ………」





 こいつも難儀な家で育ったものだ。

 実家がこうだと、子供は苦労させられる。

 結局人間の大半は、親の教育で人間が形成される。

 ちなみに俺は例外だ。

 そうならざるを得なかった。



 だが、こんな生真面目大王のミレアを育てた親は一体どんななのか気にはなる。

 放任主義でも、親が社畜系だったり、スパルタ系だと、ミレアみたいなのが育つケースもある。

 それは行ってからのお楽しみという事にしておこう。




 「でもミレアねえ、なんでしつじなんだ? ほかにもいろいろあるだろ?」





 と、考えてみれば、な質問を投げかけるラビ。

 すると、




 「そこからは!!」


 「「「!?」」」




 部屋の横から突然、バタバタと音を立てながら何かが近づいてきた。

 聞き覚えのある声と、侵入行為に思わず顔をしかめる。

 そして目を向けてみると、そこにはやはり知っている顔があった。




 「私が説明しよう!!」


 「働け馬鹿野郎」





 仕事をサボっているファリスがそこにいた。




 

 「ケンよ、つれない事を言うな。お前よく授業をサボってただろ。つまり………同志!!」


 「相変わらず教師としてどうかと思う発言してんな、ファリス。んで説明って?」


 「ふっ、よく聞いてくれた。一度聞いただろう? 特別魔法科の者はほぼ私からスカウトした、と。つまり当然ミレアのスカウトにも行ったのだが、その時言われたのだ。男嫌いを治すために、男の側近を側におけ、とな。まぁ忘れてたんだが」


 「お前最悪じゃん」






 職務怠慢にも程がある。

 やっぱり下が有能なのだろう。

 確かにあの学院の教員は質が良かった。


 こいつもやるときはやるのに、普段がこうなのが玉に瑕だ。

 もったいない。




 「レイが女だと気づかなかったら、そのまま誤魔化そうと思ってたんだけどな」


 「そりゃ無理があるだろ。となるとやっぱ俺が行くしかねぇのか………………ぐぬぬ」






 チラリとミレアを見る。

 頭を下げるのは、まぁ百歩譲ってミレアならば許せる。

 それに、困っているのであれば、無論手は貸す。






 「と言うわけで、ほれ」



 と、ファリスはスーツを取り出した。

 妙に見覚えのあるサイズ。

 どうやら、学院の制服を作った時のサイズのデータを残していたらしい。

 見る限り完璧だ。





 「距離があるからな。明日の朝到着するよう、早速出るぞ。あ、お前達もな」




 ファリスは、リンフィア達の方を見ながら、何かを企むようにそう言った。

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