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第1096話



 「おー、派手にやってんな」




 ミレア達のいる場所は、“知る力” で確認できる範囲にある。

 たった今、1人意識を失い、残りの連中は身体の動きを制限する状態異常に掛かっていた。


 終わりも間もないだろう。





 それにしても、ミレアはよくあれが『裁定』で是正可能だと見抜けたなと思う。

 “知る力” で少し向こうを注視していたが、なかなか判断が早かった。

 単なる重力魔法は、“現象” なので能力を通すことはないが、状態異常であれば、それは身体に起こった異常なので正常へ戻す事が出来る。



 お陰で、敵の虚をついて反撃出来たわけだ。




 「………」


 



 ふと、思い出した様にレイターの顔を見ると、分かりやすく苛立ちを見せ始めていた。

 襲ってこないあたり、恐らくミレア達を片付けた後で合流する予定だったのだろう。


 しかし、残念ながらそれも上手くいかなそうだ。








 「何してンの。早くかかってこいよ。始めようぜ? ()()()()タイマンをよ」


 「くっ………一体仲間達に何をした!?」


 「何もしてねーさ。ただ、お前が思った以上に俺の仲間が強かったってだけだ」




 そう言っても、目の前のキョトン顔を見る限り到底信じそうもない。

 それだけあいつらが舐められてたという事だ。




 「はぁ………これ以上時間を取っても無駄そうだ」


 「うっ………」




 そう呟いて距離を詰めると、レイターはわかりやすく肩を跳ねさせていた。


 腰が引けて、魔力循環も澱んでいる。



 一歩、二歩と距離を詰めると、覚束ない様子でヨタヨタと後ろへ下がっていく。


 くるな、くるな、と、うわごとの様に呟きながら、雑に魔法をぶつけてくるが、少し体を捻れば面白いくらいに後ろへすり抜けていった。

 破壊するまでもない。




 いい加減腹が立ってくる。


 あの怯え顔も、余裕のなさも。


 行動の一つ一つがまだるっこしい。


 これは、あまりにも、


 





 「う、うわああああああああ!!!」









 ——————酷い茶番だ。











 「………キヒっ」


 「!!」





 突然地面から感知した魔力反応。


 俺は“神の知恵” 発動状態にすぐ様切り替え、咄嗟に術式を破壊しようとした。


 が、




 「いや、違う………!!」



 破壊不能。


 何故ならそれは、既に設置済みの罠系魔法であった。

 完成した術式は咄嗟に関与できない。

 俺はすぐさま上空へ回避しようとした。


 だが、ダメだ。

 最善ではない。


 このタイミングでは、防御出来ないルージュリアに、多少なり傷を負わせてしまう。



 ならば——————






 「こいつだ!!」


 「なっ………」




 納めていた剣を前に突き出す。

 血迷ったかと言わんばかりに驚愕した声を上げるルージュリアだが、見ていてくれとしか言いようがない。


 足から伝わる振動。

 魔力の流動。



 ああ、来る——————




 タイムラグともいえない僅かな間が空き、そして、




 「あっ………………!!」




 赤い柱は、凄まじい熱気と共に一瞬俺の姿を覆った。



 そう、一瞬。

 ()()()()、だ。





 「こいつは………知らねェだろ!!」





 火柱を吸い取り、剣が次第に紅蓮に染まる。

 刃を返し、吸い取った炎をすぐ様放出しつつ、その勢いで剣を振る。




 「させっかよ!!」




 背後に回っていたレイターの魔法を裂き、続く連撃も全て捌いた。




 「チッ………………流石は英雄といったところかな」




 抜け抜けと軽口を抜かすレイター。

 バレたと分かった瞬間、打って変わって隙が無くなった。


 ようやく本性を晒してくれた様だ。





 「下手な芝居しやがって。そんだけの力持ってる奴が怯えるわけねェだろ」


 「キヒヒ、なるほど。最初から………………部屋で会った時にはバレていたわけか。いやはや恐れ入ったよ………うん、この様子だと仲間が優秀というのもハッタリではないんだろうね」




 レイターは、ミレア達の方へ目を向けながらそう言った。




 「キャラが安定しねーな。キレ症じゃなかったのか」


 「仮面は沢山持っているのでね………………さて、君の力がわかったところで、ここで僕は一度退散しようかな」


 「………何?」




 逃すわけがないだろ、と言いたいところだが、俺の力がわかったというところは少し気になった。




 「俺の力がわかっただと?」


 「うん。君はボクの魔法を消している時、眼が黄金へと変化している。そして、動きが極端に良くなっている。ただ、ボクが怯えたフリをしている時は眼は黄金ではなかったし、魔法を消すことはなかった」




 ………これは、なかなかバレてしまっている気がする。




 「ただ、トラップは消せてなかったのを見るに、やっているのは多分術式破壊だ。いやはや恐れ入ったよ。術式破壊なんて普通出来るものじゃない。だから、恐らく君の能力は身体能力………いや、頭の処理能力を異常なまでに向上させる能力、と言ったところかな? 切り替えていたあたり、恐らく制限もある」


 「へぇ………」





 かなり答えに迫っている。

 正直鳥肌ものだ。

 こいつ、()()()只者ではない。




 「ただ、一つ気になるのは、君がその能力のデメリットを隠す気がないというところだ。色々とやりようがあるだろうに、何故?」




 理解できないと首を傾げるレイター。

 わざわざ説明する義理はないが、正解したご褒美ということで教えてやる事にした。




 「優先順位の問題だ。これはデメリットであって、突きやすい弱点というわけじゃねーよ。むしろ、相手がこの弱点を知っているっつー情報がある分戦いやすいってもんだ」




 その辺りは時間制限が付いた時から決めていた。

 あえて自分から隠す様な真似はしない。

 知りたければ勝手にしろと思っている。




 「そうか。なかなか豪快な性格をしているんだね」


 「性分なもんでな。で、こっちからも質問だが、お前、ここからどうやって逃げるつもりだ?」




 力量の全てがわかったわけではないが、恐らく今のこいつでは神の知恵を使った俺から逃げるのはほぼ不可能である。

 それどころか、素の俺でも多分無理だ。



 しかし、奴には妙な余裕があった。


 不気味なまでに、警戒していない。

 いっそ、確信しているまである——————




 「!!」




 ニターっと、貼り付けたような笑みを浮かべるレイター。

 やはり、何かするつもりだ。




 「ああ、うん。逃げるよ………………いや、」









 ()()()()()()()











 「      」








 声だけが、置き去りにされた様に残る。


 目の前には誰もないない。

 それこそ、残像すら残ることなく、完全に、明確に、跡形もなく消えた。




 「は………………」




 見抜く見抜かないの問題ではない。

 奴は、完全に俺を出し抜いた。

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