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第1085話



 ダラダラと話を続け、気がつくとすっかり夜も更けていた。




 「あー、久しぶりにダラダラ話したな」


 「ケンくんは働き詰めでしたもんね」




 確かに、思い返せば今回はほぼ休みがなかった。

 弱体化した分、足で賄わなければ満足に準備が出来なかったのだ。




 「ま、どうにかなったから結果オーライだな。てか、俺はともかく流達は何してたんだよ。クルーディオのやつに何を頼まれたんだ?」




 今一番気になっていると言っていいだろう。

 王の選別にも参加せず、一体何の目的で2人はここにいるのか。

 特に隠すつもりもない2人は、徐に語り始めた。




 「そうだな………まぁ、なんというか………調査だ」


 「調査?」


 「そ。てなわけで、しばらくはここに滞在するつもりだから、多分この先お前らと行動するってことは無いと思うぜ」




 少し残念だ。

 折角合流したのだから、このまま一緒に旅をしていくのかと思っていたが、まぁ頼まれごとがあるのなら仕方ない。




 「で、なんの調査よ」


 「おお、よくぞ聞いてくれたな。聞いて驚けよ、実はこの妖精界は、ラビちゃんみたいな生物迷宮達の故郷で………」


 「それはもう知ってる」




 俺がそういうと、流は心なしかしょんぼりした顔で『そうか?』と言ってその先を語り始めた。




 「なら………早い話、管理者を倒す手段を探すために、生物迷宮について情報を探ってたんだ。お前らのことだから、どうせ管理者が生物迷宮の王の力を、ラビちゃんの母親から奪って使っているってのも知ってるんだろう?」


 「まーな」




 自分から言ったくせにしょんぼりしているのは何故だろうか。

 それはともかく、管理者を倒すという目的は同じなわけだ。




 「まー………だからさ、調査がてらラビちゃんから話を聞くためにもお前らと合流しようと思ったら………」




 いなかったわけだ。

 最初に逸れて以降、噂も聞かない。

 一体ラビとニールはどこに飛ばされたのだろうか。




 気にはなるが、あまり心配はしていない。

 ラビ達を連れ去るときに聞こえたあの声………あの声の主からは、敵意は感じなかった。


 もし、ラビを生物迷宮としてどこかに招いたのであれば、おそらくそこに、生物迷宮の秘密か何か………少なくとも情報くらいはあるだろう。




 「とりあえず、ラビを探すことを勧める」


 「お前らは?」




 当然探す、と言いたいところだが、王の選別では少しサボれば他のレッドカーペットを使っている連中に大きな差が生まれてしまう。


 管理者を倒すには、あまり寄り道もしていられないだろう。




 「いや………こっちはこっちで、さっさと管理者を倒しときたい。多分、闇雲に探すよりはずっと早いからな。だから、調査をするんだったら、お前ら2人にあいつらを頼みたい。こっちは派手にやるつもりだから、噂を聞いたらそっちにでも差し向けてくれ」


 「ま、俺もそれがいいとおもうな。もちろん任せとけ。聖の分まできっちり2人を見つけてやるよ。な、ウルク」


 「おぼぼんぼぶ(もちろんです)





 ウルクは俺の作った飯をパンパンになるまで頬張って何か言っていた。




 「………その様子だとろくなもん食ってなかったな………」


 「あいにく料理は専門外なんだよね。いっつも作ってくれる人がいたし」


 「おぼぶぼぼぶー(右に同じー)




 こいつら………

 もう少し自分の生活水準を上げる努力をして欲しい。


 特にウルク、お前王女だぞ。




 「ところで、G・Rちゃんはまだ帰って来てこないのか?」




 流にそう言われ、俺も思い出したわけだが、まぁ心配はいらないだろう。




 「そういえば、お前G・Rと面識あったのか」


 「おう、ルージュリアちゃんとも面識はあるぜ。ウルクがG・Rちゃんに魂の簡単な保護の仕方を教えてる時会ったんだ」





 ルージュリア………そういえば、あいつもコウヤも野暮用とやらは終わったのだろうか。










——————————————————————————————









 領主別宅、屋上にて。




 「そうか………あいつ、本当にやってくれたんだな」



 安堵の表情を浮かべ、噛み締めるようにイーボはそう呟いた。




 「すげー奴らだよ、金髪達は。マジで領主を倒して、疫病の患者達を治す方法を得ちまった。お陰で、俺は殆ど何をすることもなく、お前の妹は解放されたってわけだ」


 「お前にも、だいぶ世話になったな」


 「止せよ。当てもなくぶらついていた俺を見つけて生活出来る様にさせてくれた恩を返しただけだ」




 照れ臭そうにそっぽを向くコウヤ。

 しかし、それを見つめるイーボの目は、心なしか寂しげであった。




 「恩返しか………………なら、もうお前は自由だな」


 「………」


 「ケン達のところのついて行くんだろう。お前の、唯一残った記憶である、弟を探すために」




 返事はない。

 その沈黙は、バツの悪さからくるものであり、肯定であった。

 自分の手を見つめるコウヤ。



 故郷はどうでもいいとかつて言った彼も、いるかもしれない肉親の事は、どうしても気になっていた。

 何もない………いや、何を得ていたのか、何を失ったかさえわからないその手のひらに残った唯一のカケラ。


 いつか探すのだとすれば、その機会はきっと、今である。




 でも、ここに居たいという気持ちも、今のコウヤの胸の内にあるものだ。



 迷いは、イーボにもわかる。

 より安寧を求めるのであれば、確かな未来を求めるのならば、イーボはコウヤを引き止めるべきだ。


 


 しかし、






 「行ってこい」



 「!!」



 彼はそれでも、背中を押す。


 危険でも、不確かでも、悔いが残らない道を。


 イーボは、コウヤの友人として、最後に出来ることをしたのだ。


 


 「………いいのかな」


 「いいに決まってる。それに、お前がそうしたいのはそっちだろう」




 とっくに答えは決まっていた。


 それでも、躊躇いがあった。

 友人よりも、自分を優先することを暗に伝えるようなこの選択に、罪悪感を感じていた。


 だがイーボは、そんなコウヤの躊躇いを、いとも簡単に消し去ったのだ。


 友人故に。


 それが、イーボの選択であった。




 「………ありがとな。イーボ」


 「フン、精々きっちり終わらせてこい」




 そう言って、2人は拳を突き合わせ、コウヤは必ず目的を遂げると誓ったのであった。

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