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第1034話



 こちらが武器を構えると、衛兵達はたじろぎながらやや後退した。


 なるほど。

 こいつらはついさっきの新米と比べたら、技術の差を理解する程度には心得があるらしい。


 だが、あまり派手な技を使うわけにも行かないだろう。

 手数は少なく、そしてできる限り怪我もさせたくない。


 この戦いに関して悪意を以って戦っている者はいないというなんとも厄介な状況のせいで、力をセーブせざるを得ない。




 「………峰打ち狙い………ですか?」


 「わかんのかよ」


 「同じ………ですから、なんとなくは」




 どうやらこいつも傷つけるつもりはないらしい。


 だったら好都合。




 「そうか………ンじゃ、全員オネンネさせようぜ」


 「はい」




 流石に息ぴったりとは行かないだろうから、こちらが合わせることにしよう。


 お互い準備は万端。

 というわけで、初動——————の前に、音魔法をG・Rに向け、指示を出す。


 内容は、





 『目を瞑れ』




 G・Rが瞼を動かした瞬間、神の知恵を再発動。

 完全に閉じ切った瞬間を狙い、光魔法を放つ。





 「ッ——————おまっ」






 ——————閃光。





 洞窟内を一瞬完全に照らし切る強い光が放たれた。

 どの道後ろからも敵は来ている。

 そして、もれなく魔法による暗視をしようている。


 だから、まとめて潰れてもらう。





 「ぐぅッ、ぉぁ…………ァァアアアアアッッッ!!?」


 「現代の軍用ゴーグルと違って、安全装置がないもん——————なッ、と………ぉ!?」





 間一髪、頬の横を槍が掠る。


 目を開けると、そこには3人ほど槍を持ってこちらに向かっているのが見えた。


 なるほど優秀だ。

 ほぼノータイムで放ったが、魔力の質で見抜かれていたらしい。




 「貴様っ………小癪な手を………」




 と言いつつ武器を振る手を止めないアンタはやっぱりプロだ。

 文句なしだよ。

 だが、他の連中には言っておくべきことがある。






 「便利さ故に、()()()()目が眩んだな。二度と忘れんなよ」


 「くそぉ………………」




 喰らった連中はのたうち回っている。

 今のうちにさっさと仕留めて——————




 「ぐ………ぉお………」





 目の前にいたやつの腹に、石突が刺さっている。

 今の鋭い一撃は、G・Rのモノだった。


 しかし、敵もタダではやられない。

 目を充血させ、引きちぎれそうなほどに血管を浮かび上がらせ、隣の2人に攻撃をさせた。



 マズい、と思い剣を出そうと思ったが、思わず手が止まる。

 瞬時に、手を出すと邪魔になるとわかった。




 「ふぅーっ………」




 槍から手を離さず、その手を軸に逆立ちのような体制へ移るG・R。

 初撃を交わした直後、空中で槍を掴んだ男の顎を蹴り、失神させる。



 ——————刹那、目つきが変わった。



 当然のように放たれた第二撃。


 左側の攻撃を身体を捻って回避しつつ、もう片方の攻撃は、取り戻した槍を使って体から逸らした。





 この間、全て空中。






 「やるな、お前」


 「これくらいは必須………ですから」




 無表情………かと思いきや結構なドヤ顔でそういうG・R。


 お茶目な奴だ。

 でも、決めるときは決めてくれそうだ。





 「沈め——————ます」


 「おうよ」




 凄まじい実力。

 マイペースでゆっくり喋る女の槍捌きは、実に軽快で且つ重みのあるモノであった。















——————————————————————————————













 「はっ………はっ………」




 敵を倒し切ると、俺たちはすぐに目的の場所まで走っていった。

 追っ手の数は思ったより多くない。

 先程の光魔法で、やはり後ろの方でも大勢やられたらしい。

 お陰で俺は相当魔力を持っていかれたが、使った分の割にはあっている。





 「ンで、目的地は?」


 「もう目の前………です!」





 目の前、と言われて前を見たが、やはりなにもない。


 恐らくは隠し通路。

 そうなると、見つからない方がいいだろう。




 「OK………そんじゃ」





 神の知恵、3秒消費。

 あらかじめ練っていた魔力を使い、煙幕を発生させた。




 「「「!!」」」




 通路の奥から喧騒が聞こえる。

 こちらが隠れたからか、騒いでいるようだ。




 「こっち………です」




 G・Rは床の隠し通路を開け、俺が入るのを待っていた。




 「おお、床が剥げるのか」


 「先にお願い………します」




 閉め方があるのだろう。

 ここは任せた方が良さそうなので、大人しく穴に入った。


 すると、G・Rは慣れた様子で通路を塞ぎ、何か魔法をかけた。




 「この奥………です。あの子達は、この奥に………」


 「………」




 妙な気分だ。


 本気で身を案じているようにしか見えない。

 見えないというか、恐らく本気だ。


 だが、一体どういう事だろう。




 この先で、人の気配はまるで無い。

 穴はかなり浅いのですぐにわかった。

 灯りがついているお陰で、地面はもう見える。

 これだけ浅ければ目を使わなくても、なんと無く気配察知は出来るのだ。





 なのに、誰もいなかった。






 そして思い出されるのは、衛兵が『敵は1人』だと言っていた事。

 間違いなく、何かがある。





 この女は………G・Rは、一体何を考えているのだろうか。

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