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第1029話



 「やっぱでかいウチだな」





 妖精界独特の建築様式である、この機を利用した家の作り。

 ツリーハウスとはまた違い、自然の木をくりぬき、居住スペースを作った上で外やうちから木を補強して頑丈な家にしている。



 しかし、この領主の別邸はまた他の木とは別格の大樹。

 高層ビル顔負けの高さと、広すぎるほどの敷地を持った豪勢な家だ。


 庭の造形もかなり凝っている。


 あたりの元締めである領主の別宅というだけのことはあるらしい。




 少し関心を抱きつつ、屋敷に敷地を歩き回った。


 空は一面葉で覆い隠されているが、備え付けられた灯りのおかげで暗くない。

 いつかこんな家を作ってみるのもありだと思いながら歩いていると、いつの間にかもう玄関前まで来ていた。



 すると、ふと扉の前に年老いた男、執事とおぼわしき人物が立ってこちらにお辞儀をしていた。





 「ギルドマスター・ミニル様、ゲルニア様、遠路はるばるようこそおいで下さいました」


 「こちらこそ久しぶりだッピね。早速で悪いけど、案内してもらっていいッピか?」




 執事の目がこちらを向く。

 目が合うや否や、人の良さそうな笑顔を向けてくれた。




 「そちらの方々が依頼を受けてくださった冒険者様ですね。ええ、案内いたしましょう。どうぞこちらへ」




 執事がノックをすると、ドアはゆっくりと開かれていった。


 それはまさに、想起される貴族の家そのものであった。

 財力と権力を誇示するかのような豪勢な内装が、目に飛び込んできた。

 しかし、金や銀とわかりやすいものではなく、一流のデザインで揃えられた趣味の良さを感じる。


 そして、外観とは似ても似つかない人工の美を揃えた内装をぐるりと一通り見終えると、奥には整列した召使い達が並んでいるのが見えた。





 と、わざわざご丁寧に並んでいるが、老人は召使い達の方ではなく、早速右折して別の方角へと案内を始めた。





 「あそこ通るとかじゃないんですね」


 「馬鹿、言うな。金持ちのどーらくだ、どーらく」




 しかし、そう言いつつもリンフィアと同じことを思っていた。



 そういえば、少し話は切り替わるが、





 「………強いですね。あの方」


 「だな。白紙化で今の実力はわかりにくいが、積み上げたものを感じる。中々だぞ」





 執事の爺さんは、まるで隙がなかった。


 かなり強い。

 以前きっとさぞ名のある戦士だったのだろう。




 「でもなんであれほどの爺さんがこんなところに………」


 「隠居暮らしをするにも、白紙化で金がなくなってしまいまして。今は老若男女問わず、失ってしまった財産を取り戻すために必死に稼いでいるのですよ。まぁ、皆様もご存知かと思いますが………」




 聞こえていたらしい。

 よく考えれば、元々俺たちもアイテムボックスに入れていた金が使えなくなったから冒険者になったのだった。




 「しかし、私は幸運でございます。たまたまお見かけした領主様に事情をお話ししたら、何も言わずに雇ってくださったのですから」


 「へぇ………」




 人格者………ということになっているようだ。

 まぁ、人の悪さを表に出していたら、ただでさえ治安が悪い里が更に荒れることになるだろう。





 「領主………サマは、ここの召使い達に慕われてンのか?」


 「ええ、それはもう。元々小さな集まりだったこの領でその人望によって今の座についたお方。後からこの領に来られた方の中には、まだ信用されていない方もおりますが、少なくともあの方と対面したことがある方から悪い印象を聞いたことはこざいませんな」 




 「「「………」」」






 「みんな」にとっては人のいい領主ということだ。


 敵となる側としては、なんとも複雑な心境だ。


 後ろの2人も苦い顔をしている。

 執事の言葉はつまり、常に領主の元にいるものの意見であり、特に感情を読める目を持ったミレアにとっては疑い用のない事実となる。



 それ故に、自分の中にあるものへの疑念を覚えたことだろう。




 本当に領主は敵なのか、と。




 状況証拠と可能性で、領主がゴーレムの件の黒幕だとしているが、間違っている可能性はゼロではない。

 だから、これからそれを見極めるために、このすぐ目の前にある隔離施設を見に行くのだ。





 「この先でございます」




 魔法の結界の張られたドア。

 奥には間違いなく人が大勢集まっていた。


 いよいよ、その患者にご対面という事だ。




 「皆様。仕切りがあるとはいえ、これから向かう場所は疫病の患者の方が隔離されている場所でございます。くれぐれも、私から離れないよう、ご注意下さいませ」




 と言いつつも、執事は無造作に扉に手をかけていた。

 これから疫病患者が集まる中に突っ込もうというのに、まるで心配していない様子。


 それだけこの結界が確かなものだということだろうか。





 「………でも一応外側を囲っとくか?」





 そう思い、魔法の防御膜を張ろうとしたその時、








 「おっ、おい!! 金髪!!」






 後ろから突然肩を掴まれたと思うと、そこにはなぜか息を切らして立っているコウヤの姿があった。





 「どうした? 何かあったか?」





 切迫した表情。


 先程とは違い、確実に何かが起きていた。

 俺もミレア達も、そしてギルマスやゲルニアも、咄嗟だが真剣に聞き入っていた。


 すると、コウヤは言葉を詰まらせながらも、早口にコウヤはこう言った。





 「さ………っ、里に………里に大量のモンスターの大群が!! カイトが襲撃されたんだよ!!」



 「「「——————!!」」」






 寝耳に水な報告に、一同思わず絶句する。

 たった1人を除いて。





 「………聞いてしまわれたのですね」



 「「「!!」」」





 意味深な言葉を呟いたのは、先頭に立っている執事。


 扉に向かっていた執事は、扉のとってから手を離し、物々しい表情のまま振り向いてこちらを見ていた。

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