第十九話 久しぶりのお茶会
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ヴェルディエ公爵邸の庭園。
春の花が咲き誇る温室サロンで、ミレイユは少し緊張していた。
今日は久しぶりのお茶会だった。
昔からの友人たちを個人的に招いたのだ。
最近は皆忙しい。
結婚。
家の仕事。
社交。
なかなか全員集まることはない。
それなのに今日は――
全員が揃った。
奇跡のようだった。
ミレイユは嬉しそうに言う。
「今日は来てくださってありがとうございます」
テーブルを囲むのは、懐かしい顔ぶれだった。
クラリス・フォン・リーデル。
結婚しても変わらず社交界の中心にいる。
落ち着いた微笑みで、皆の話を聞いている。
エレノア・シュタイン。
相変わらず理知的で、どんな話題にも的確な答えを返してくれる。
ロザリンデ・ケラー。
明るく、正義感が強い。
何かあればすぐに動く行動派だ。
ベアトリーチェ・オルロフ。
彼女は少し恥ずかしそうに笑っていた。
実は妊娠している。
しかし安定期に入り、つわりもないということで今日の集まりに参加してくれたのだ。
そして。
ミレイユの妹、フロレンス。
聖女ミサキの親友でもある。
温室の中には、久しぶりの笑い声が響いていた。
近況報告。
結婚生活。
社交界の出来事。
話題は尽きない。
一通り話が落ち着いた頃。
ミレイユは少し真面目な顔になった。
「皆さんに相談があります」
友人たちは興味深そうに顔を上げる。
ミレイユは言った。
「ルシアン殿下に
将来の職業を考えた方がいいと伝えました」
カップを見つめる。
「出過ぎたことだったでしょうか
六歳差ですし……」
少し困った顔になる。
「二十歳の私に言われて
嫌われていないでしょうか」
クラリスがふっと笑った。
「まあ
結婚前の恋愛相談ですのね」
ミレイユは驚く。
「恋愛相談?」
クラリスは優しく言う。
「初々しいですわ」
エレノアは冷静に言った。
「そういうことは
本人と話し合うのが一番です」
ロザリンデが笑う。
「そうそう
私たちも昔はそんなことで悩んだものよ」
ベアトリーチェも優しく頷く。
「時間が解決してくれることもあります
大事なのは
会話をやめないこと」
既婚者の三人は、どこか微笑ましいものを見る目をしていた。
若い恋。
かつて自分たちも通った道。
そんな空気だった。
ただ一人。
フロレンスだけは違った。
彼女は首を傾げている。
「でも
姉様はルシアン殿下のこと好きですよね?」
ミレイユは固まった。
フロレンスは続ける。
「婚約者なんですから普通ですよね?」
彼女は本当に分かっていない。
今まさに婚約者と甘い時間を過ごしている最中なのだ。
姉の静かな恋心など、まったく気づいていない。
友人たちは顔を見合わせた。
そして小さく笑った。
温室の中には、柔らかな春の空気が流れていた。
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