第十三話 それぞれの想い
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サロンの窓から柔らかな光が差し込んでいた。
ミレイユと美咲は向かい合って座っている。
美咲はしばらく迷っていたが、思い切って言った。
「もう一つ聞いていいですか」
ミレイユは微笑んだ。
「どうぞ」
美咲は言う。
「六歳差の再婚約って
嫌じゃないんですか?」
あまりにも直球だった。
ミレイユは一瞬驚いたが、すぐに笑った。
「嫌ではありませんよ」
カップを持ち上げる。
「ルシアン殿下は……」
少し言葉を選んでから続けた。
「どうやら私に好意を持ってくださっているようですし」
美咲は思わず目を瞬かせた。
ミレイユは穏やかに言う。
「とても真面目な方です
仲良くやっていけそうだと思っています」
それはとても自然な言葉だった。
美咲は少し安心する。
すると今度は、ミレイユが首を傾げた。
「では
こちらも一つ聞いてよろしいですか」
美咲は身構える。
ミレイユは言った。
「聖女様と王太子殿下は
恋仲なのですか?」
美咲は思いきりむせた。
「えっ」
ミレイユは慌てて謝る。
「すみません、失礼でしたね」
美咲は少し考えた。
嘘をつくのも変だ。
それに。
この人は信用できる気がした。
美咲は小さく言った。
「……まだ違います
でも」
少しだけ頬を赤くする。
「好きになりかけてます」
ミレイユは優しく微笑んだ。
美咲は慌てて言う。
「でも
これ、秘密にしてください」
ミレイユは頷く。
「もちろんです」
その約束は、とても自然だった。
その頃。
王城の別の廊下で。
ルシアン・ヴァルセリオンは悩んでいた。
(兄上に相談するか)
ミレイユとの顔合わせは、うまくいった。
歴史の話をして。
会話も続いた。
でも。
それはミレイユが歩み寄ってくれたからだ。
次は自分の番だ。
ルシアンは思った。
(ミレイユはどんな話が好きなんだろう)
兄なら知っているはずだ。
王太子ヴァレリウス。
長年の婚約者だった。
しかし。
ルシアンはすぐに気づく。
兄は今、忙しすぎる。
午前は公務。
そして午後。
聖女のところへ行く。
毎日だ。
それだけではない。
最近、兄の顔はどこか疲れている。
(……うまくいってないのかな)
そう思うと、とても相談できなかった。
ルシアンは方向を変えた。
向かったのは書庫。
そこには第二王子セドリックがいた。
分厚い本を読んでいる。
ルシアンは言った。
「兄上」
セドリックは顔を上げる。
「どうした」
ルシアンは少し迷ってから言った。
「ミレイユのことなんです」
セドリックは静かに聞く。
ルシアンは続ける。
「社交はあちらの方が上です」
「僕がリードしないといけないのに」
セドリックは少し笑った。
「無理だな」
ルシアンは顔を上げる。
セドリックは続けた。
「ミレイユは社交界の中心人物だ
十二歳のお前が勝てる相手ではない」
ルシアンは少し落ち込む。
しかしセドリックは言った。
「だから
甘えておけばいい」
ルシアンは驚く。
「甘える?」
セドリックは頷いた。
「今は仲良くなることが大事だ
背伸びをする必要はない」
ルシアンは黙った。
本当は。
早く大人になりたい。
ミレイユに釣り合う男になりたい。
その焦りは消えない。
でも。
兄の言葉を聞くと、少しだけ安心した。
ルシアンは小さく息を吐いた。
「……わかりました」
セドリックは再び本に目を落とした。
「十年もあれば
嫌でも大人になる」
ルシアンは少しだけ笑った。
その言葉は、思ったより心に残った。
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