「次元」
「……あんた。師はいなかったのかもな」
「何?」
「ヴィエルナとよく戦っていたから解る。あんたの体捌きには、いわゆる拳法のような術理がまるでない。美しくない」
「おいおい、武道家気取んのはよせよ。お前さん、そんな大層なことを言える身分じゃ」
「そう、なんというか――野性的なんだ。野生の勘で戦ってる。そんな印象を受ける」
「野生の勘」
「私見だけどな」
「……何でもいいけどよ。講釈たれる暇があんなら早く俺に一発当ててくれよ。待ってんだこっちは」
「……特に記憶は刺激されないか」
「されねーよ。試すな俺を、バカにしてんのか。そんなことをして欲しくてお前さんと戦いたいなんて言ったわけじゃねえの」
「……『一発食らいたい』ってことなのか?」
「超えてもらいたいんだよ、今の状態の俺をな。『痛みの呪い』っつーひっかかりを持ったお前さんに追い詰められりゃあ、何かまた思い出しそうな気がしてんだよ。ここまでがそうだった」
「……だから英雄の鎧も使ってないのか」
「そういうこった」
悪びれる風もなく、トルトが言う。
魔波を感じなかった。
加えてこいつはここまで、俺の攻撃をただ往なし続けるばかりで、全く反撃を見舞ってこようとしない。
英雄の鎧を使っていないのなら納得がいく。頭の上では。
今のこいつに、俺の拳を受けきれる身体強度は備わっていないのだ。
……だからこそ、心は納得しない。
「舐――」
「舐めるなとか言うなよ。お前さんは俺より弱えぇ」
「――……」
「同じ条件下で戦えば結果は見えてる。そこに進展はねえ。だから意図的に自分を追い込める状況を作ってんのさ。分かったら打ってこい、魔弾の砲手でも拳でも、何でも。俺と対等に戦おうとすんじゃねえ」
「…………」
……俺の攻撃は、身体強化をしていない状態のトルトにでも往なされている。
受け止められない攻撃。だから往なしている。
だが、攻撃を往なすにも、その速さに体が付いていくことが必要だ。
攻撃の力を殺す、同等の力が必要だ。
だから、この状況はつまり――トルト・ザードチップの素の状態での戦闘能力は、英雄の鎧下の俺を一部上回っている、ということ。
「……解った」
走る。
即応し、トルトが俺との距離を微妙に詰める。
あれもそう意図して動いているわけではなく、勘で動いているのだろう。そう動けば、俺が距離感を失って攻めにくくなることを本能的に察知しているのだ。
――武道家になるな。
魔術師になれ、天瀬圭。
弾丸をトルトの眼前に展開。
弾かれた。
「っ!?」
「効くかよ、教師レベルの相手にンなコケ脅しが――!」




