「最弱前に、最弱は」
◆ ◆
「魔弾の砲手っ!」
「…………」
魔弾の砲手が飛ぶ。
「魔弾の砲手っ!!」
「…………」
魔弾の砲手を避ける。
「魔弾の砲手っ! 魔弾の砲手っっ!!!」
「…………」
避けて避けて、あっさり避けて。
「はあっ、はあっ、はああっっ……フンッ!! 伊達に兵士コースに入ってるワケじゃないってことね……! ま、あんたなんかまだまだだけどッ」
「…………」
マリスタは、考えていた。
(詠唱破棄。って確か、呪文とかその構築式とか、その魔法についてちゃんと理解しておかないと、使えないもの……だったわよね)
対する相手は自称リシディア国王女、ココウェル。
ともすれば初等部の女子にも見えてしまうほど小柄だが、その豊満な体つきからして同い年くらいだろう、と目される少女。
つまり、人生経験で言えばマリスタとそう変わらないであろう、少女。
「魔弾の砲手っ!」
「おうおっ」
悲しいかな、マリスタは自分が相当にサボってきた人間であることを、強く自覚している。
自覚しているからこそ、仲間たちに支えられ、彼女はここまでやってこれたのだ。
――だからこそ、思うのだが。
(もしかして……この子……)
「チイイィィッッ!! 魔弾の砲手魔弾の砲手魔弾の砲手魔弾の砲手ばりぇぴぽっっ!!??!?!」
爆音。
ココウェルの背に一発ずつ展開されていた魔弾の砲手が残らず巻き込まれ、ココウェルを巻き込んで爆ぜる。
ロングワンピースの裾を踏み滑り、ココウェルは顔から盛大にずっこけた。
無論、英雄の鎧は使っていない。
(じ……自爆した……詠唱噛んで失敗した……!!)
「っ~~~~~っ!! 痛った……!!」
(……この子、もしかして……)
義勇兵コース歴数か月のマリスタでも、容易に辿り着く答え。
この少女は。自称王女は。
(……メチャクチャ弱いんじゃ……!?)
「あ……あのさ、ココウェルちゃん」
「『ちゃん』付けで呼ぶな王族に向かってお前ッ!! 大体わたしの方が年上だろうがッ!」
「もしかして、魔弾の砲手初めて使った?」
「!!!!」
「………………」
「ばっばっ、ばっっっか言ってんじゃねーよ貧乳がよ!! 王女たるわたしが魔法の、しかも初歩の初歩の魔法……ハァ?!?!??!?」
(すっごいキレてる……)
「むしろわたし!? お前の実力を見てただけだし!?!? 聞いてんだからなお前、四大貴族史上最弱の女ッ!! アルテアス家凋落の兆しっ!! クソザコド低能ものぐさ貧乳女ッッ!!」
「――――魔弾の砲手」
マリスタの、背後に。
空間を琥珀色に染め上げる程の弾丸が、展開された。
「――っわ……!?」




