「謝罪」
ロハザーは頭を下げた。
「ごめん。今更だけど悪かった」
「――……」
「あいつと手を組む、なんて口走ったのは俺だ。今更何言っても遅いだろう。でも謝らせてくれ。ごめん。……すまん。本当に悪かった」
「ど……どうしてナタリーに先に謝るの!?」
俯いて立ち尽くすナタリーに向いて立っていたロハザーに、背後からパールゥが食ってかかる。
ロハザーは彼女に振り向きもせず、頭を下げ続ける。
「言い訳がましいが、理由まで話しておく。『あんたにギャフンと言わせたい』と言ったが、それはあくまでゲームのルール内で、勝ち残るつもりでいるあんたを負かしたいっていう、」
「犯罪者の後付け弁明にそっくりですね。今の言葉」
「悪かった。すまん」
「……いや続きどうしたんですか。言い訳の」
「どこまでいったって言い訳だ、ただの。あんたの言葉遮ってまで聞かせるもんじゃねー。言いたい放題言ってくれて構わねーよ。そんだけのことを俺はしただろうから」
「…………」
平謝りを貫くロハザー。
気が付けば、パールゥも強い言葉をかけることが出来ないでいるようだった。
「……サムいんですけど。そうやって誠意らしきものを見せれば許してもらえるとかお思いで?」
「違う。でもすまん。悪かった」
「……………………、もういいですよ」
「えっ?」
ロハザーが素っ頓狂な声を出し、顔を上げる。
ナタリーは手近な壁にもたれかかりながら、床に座り込んだ。
相変わらず、その表情は窺えない。
「も……もういいってのは、その」
「言葉通りの意味です。もう謝るのは止めてください。耳障りでもあるので」
「お、おう。わかった」
「……一々言わなくても解っていますよ。この状況が、貴方の望んでいたものじゃないことくらい」
「あん?」
「『ブッ飛ばすんじゃなくてマークを破壊するだけにしろ』って、言ってたじゃないですか。その言葉だけで十分ですよ。貴方が考えていることを推し量るのには」
「…………おお」
――どう返していいかわからなかった、というのが、ロハザーの素直な感情である。
殴られて気が動転しているのじゃなかろうか、などとは口が裂けても言えなかったが。
目の前にいるナタリー・コーミレイは、いつもの彼女とは雰囲気が違って見えた。
「それに、私にも過ぎた部分はありましたし。事実とはいえ」
「おおっ!?」
「……なんですか。人が珍しく非を認めて話してみれば」
「じ……自覚はあるのね珍しいことしてるってね」
「喧しいです。……無視できなくなってしまったのですよ、今は」
「あ? なんだって?」
「なんでもないです。私に配慮して下さるなら、そこの女を連れて早く消えてください。お願いします」
「……おう、分かった。ホラ出るぞ、フォン。スタッフさんも待たせてる」
「……謝罪は?」
「悪かったって。でもいくらなんでもやりすぎだぞ」
「あいこだもんっ。ナタリーだって」
「だからどっちにも思ってんの」
「だったらナタリーにもっ……!」
言い争いながら、スタッフに先導されて去っていく二人。
ナタリーはニット帽を目深にかぶり、大きく胸を上下させた。
シャノリアは、そんな彼女を神妙な顔で見つめていた。




