「最強をのした最強」
その体ごと、手の甲の赤い光は消し飛んだ。
頭上から、散弾の如き勢いで降り注いだ魔弾の砲手になす術なく飲み込まれ、押し潰された女学生が意識を飛ばす。
英雄の鎧を使った、ベージュローブの相方が、魔弾の砲手の連発で意識を刈り取られてしまったことに、
「ッッ……!!」
否。
それを片手間に成し遂げたトルト・ザードチップという教師に、ただ戦慄を覚えた。
少年もまた、意識の途絶える寸前。
見えもしなかった腹部への一撃は、それだけで全身に虚脱感を覚える程に強烈で。
胸に付けられた赤い宝石も、既に白い手袋を付けたトルトにつかまれ、彼の目の前で虚しくも砕けていくところである。
「ザードチップ……先生ッ……!!」
「俺を最初の相手に選んだのが運の尽きだったな。これでも義勇兵コース担当教師だ、ナメられるわけにはいかないもんでね」
「くそ……っ」
その言葉を最後に、トルトに胸倉をつかまれた状態で意識を失うベージュローブの少年。
トルトは肩で揺れる髪を垂らすようにして屈むと、すぐそばに倒れている少女の背をつかみ上げ――二人を木枠の壁に、寄り添うようにして寄りかからせる。
『な……なぁーーんとぉーーーッッ!!! 開始十秒ほどの出来事!! 信じられない速さで一組のカップルが脱落、ついでの意識も欠落!! なんて力だ、イベントの趣旨を理解しているのか!? だがその力は間違いなくホンモノ!! トルト・ザードチップ&《アンド》シャノリア・ディノバーツペアーー!!』
「やかましい連中だぜ、ったくよ……」
両中指で耳を塞ぎながら、シャノリアの下へと帰ってくるトルト。
一見隙だらけなだらけきった動き。しかし、トルトに手を出そうと構えていた者達はすっかり戦意を失い、その場に立ち尽くしている。
彼らは思い出した。
実技試験にて。トルト・ザードチップという男は、瀕死とはいえあのナイセスト・ティアルバーを一撃で仕留め、今もなお義勇兵コースの演習授業を受け持つ異例の教師であることを。
「……一応言っとくが。俺とシャノリア先生に近寄んじゃねーぞ。ここにいる全員で来たって同じだってことを、よーく頭に刻み込んどけ」
『…………!!』
「ははは……怖いですよ、ザードチップ先生。これ学生の企画したただのイベントですよ?」
「下らねぇ。だが、だからこそ手抜きはしねぇんですよ。こんな腑抜ける機会にこそ、日々の積み重ねを問われるってことで。案の定だ、まったくなっちゃいねぇ」
「そ、それもそうですけど……ていうか、よく参加しようと思われましたね。学生の企画に」




