「方針確認③」
「……話を戻そう。つまり、欲しい情報は敵の侵入経路だ。疑っても詮無い内部犯説は置いて、可能性として挙げておきたいのは――簡易転移魔法だ」
「簡易?」という声が魔術師コースの女子達から漏れる。
ギリートがニコニコと彼女等に近寄りっていく。
説明するつもりなのだろう。簡易転移のことを。
俺の言葉にフェイリーが頷く。
「……だな。襲撃者はそれを使ってロハザー・ハイエイトらの前から姿を消した。俺が情報筋を当たってみよう。強固な魔法障壁によって守られた建物内部に、外から簡易転移を使って侵入できるのかどうか」
「頼む。ギリートも、もし大貴族のコネを使って情報が手に入るならそうして欲しいんだが」
「ん? うーん。まあ、それもやってみる価値はあるかな」
「それ『も』?」
「うん。敵の正体についても探りを入れてみるつもり。王国には親しい繋がりがあるからね、一応」
「――そうか、お前は父親が……」
「はい、王国騎士長なので。探る価値はあると思います」
「騎士長!?……なのか」
「うん、そうだよ?」
「…………ますますお前が信じられなくなりそうだよ」
「信じようよ!」
「リアの真似をするな気持ち悪い」
「ふざけるなお前ら。――王国にこの件を伝えるのはまだ早い、それを忘れるなよ。プレジアとリシディアの関係を悪化させかねん」
「承知してますとも」
「……今のところ動けるのは、このくらいだろう。他にはあるか、アマセ」
「無い。……あの無責任女の考えがここまでならな」
「名前で呼べ、解りにくい。……どうも精神的に未熟だな、お前達は。そんなことじゃアルクスは務まらんぞ」
「……ええ」
「だがいい頭を持ってる」
フェイリーが俺の前に立ち――初めて緩んだ表情を見せた。
なんだかその目を直視できず、俺は目を逸らした。
「今後も頼らせてもらおう。アルクスの大半が任務で出払っている状況では、お前の頭は役に立つ」
「買い被りだ。俺はナタリー・コーミレイの仮定をなぞっただけで」
「だから評価してるんじゃないか。あの子も結構な切れ者だが、それをここまで導けるお前も相当なもんだろ。自信を持てよ、いいコンビだぞお前達」
「コンビね」
「お前が満足に動けていたらと思うよ。実力に関しても折り紙付きだからな……今の境遇にへこたれず、今後も精進してくれ。プレジアの為に」
「…………」
…………プレジアの為に、か。申し訳ないことだな。
俺は俺の為にしか動いていない。
ここに来たのも、長々と講釈めいたことを垂れたのも――
〝リシディア王朝第二王女、ココウェル・ミファ・リシディアよ!〟
――そう。
俺が隠しているお忍びの来訪が、今回の件に関わっている可能性があるから、に過ぎない。
これを置いては、自分の目的になどとても邁進出来ないだろう。
心の自由を取り戻す為。
それだけが、俺がこの件に関わる理由だ。
だからこそ、早急に奴らを探さなければ。




