「2つのクロを結び」
「い……痛みって、」
「…………」
「…………ナイセスト・ティアルバーが見せた魔術の名前ですよ。エリダ達も見たでしょう――赤茶けた化け物の姿を」
「……忘れるワケ無いでしょ、あんなの」
エリダが苦い顔で腕を組む。
パフィラもナタリーを見て頷いた。
「……どういう理屈だか、解らないのだけど?」
「ええ。説明して差し上げますよパールゥ、ですから黙っていていくださいね。……風紀委員もシータも、あのとき『痛みの呪い』を目撃している。共通点はそこしかありません」
「ちょっと待って、ナタリー。それはちょっと決めるのが早すぎるんじゃ――」
「『無法』だ、システィーナ」
「――――え?」
周囲の目線が俺に向く。
しまった、煩わしくてつい口に出た。
ナタリーの目が何かを切れそうな程に細められる。
「邪魔しないでいただけます? ケイさん」
「冗長なんだよお前の話は。情感煽りながら語れる場面じゃないだろう、いいから早く事実を適示しろ」
「誰も彼もが貴方のような頭でっかちではないのを理解しなさいアンポンタン。この場の全員に解ってもらわなければ困るのです。なにせこの仮説が正しければ、ここに居る者ほぼ全員が敵に狙われていることになるのですから」
『!!?』
驚愕が場を貫く。
パフィラでさえも言葉をしっかり理解したらしい、初めて口を閉じて押し黙っている――――成程。インパクトのある語り方が確かに理解を進めているようだ。
「ちょ……ちょっとまってよナタリーっ! それって、あたしみたいな貴族以外の奴もってこと?」
「私も入ってるのかしら?」
「勿論です。エリダもリコリス先生も、校長先生もです。唯一――――フェイリー・レットラッシュさん。貴方を除いては」
『!!!』
「……誤解を招く言い方をしないでくれるか。俺が敵側だと思ってそうな顔してる奴が何人かいるぞ」
「ばれた!!!!!」
「安心してくださいパフィラ。レットラッシュさんは敵ではなく、狙われないというだけです。だって彼は『痛みの呪い』を目撃していないんですから」
「目撃……そうか、『目撃』か。それなら解らんでもないな」
「ど、どういうことなのアマセ君。ちゃんと解るように説明してよっ」
「……いいですかパールゥ、皆さん。私の仮説は、『シータは無法に関わっている』ということです。だから無法者の集団に襲われた。ですが無法――法を犯すような出来事、そんな非日常に彼女は遭ったことが無いと言う。でも、たった一つだけ遭っていたんです。それが」
「あの赤茶モンスターだってこと!?」
ナタリーの言葉を待たずしてエリダが叫ぶ。
〝『痛みの呪い』は、『無限の内乱』における『魔女狩り』で、秘密裏に使われた精神拷問用の魔術――禁術だ〟
禁術、すなわち法を犯す無法者。
シータ・メルディネスは、そしてここで倒れる風紀の者達は、予期せずして無法の存在と遭遇していたのだ。
「無法者に計画的に襲われる。それはそのまま、何かしらの無法を目撃している証拠になる。それが『痛みの呪い』だったのです」




