「察しのいい疎遠者」
「全く。だから俺に訊いても無駄だぞ」
「嘘ばっかり」
「適当な鎌をかけるな。何も知らないと言っただろ。無駄な探りを入れるな鬱陶しい」
「鎌じゃないわ。確信。まあ今はなんだか吹っ切れてるみたいだけど」
「何?」
「稽古中、三週間、ずーっと。あなた、自分がどれだけ上の空だったか全然覚えてないの?」
「――――」
――それは否定出来ない。
その時に比べれば今はいくらかクリアだ。
そういえば誰かからも、顔によく出るのだと言われていた気がする。
くそ、呪いやギリートや劇に意識を取られ過ぎてすっかり失念していた。顔のことなんて。
厄介だな。
「やめてくれるか。『発作』が起きそうだ」
「何言ってるの。今あなたに魔波の乱れは感じ取れないわ。都合よく使わないの」
「……分かるのか? そんなの」
「え。……当たり前でしょ。忘れてらっしゃるかもしれませんけどね、私はあなたの監督役兼、内々の保護者なんですからね」
取り繕ったように当たり前と言うな。面食らってたじゃないか今。
「内々の保護者って」
「表立って言うことはないけど、ってこと。校長先生からも言われてるんだから」
「余計なお世話だ。そりゃあお前にここを紹介してもらったのは感謝してるが」
「じゃあ手間賃だと思って被保護者に甘んじなさい」
「………………」
「そんな怖い顔したって無駄ですからね。……さてと。本当に、今回の件に関しては何も知らないのね?」
「知らない。確かな情報は何も手元にない。興味も無い」
「不確かな情報はあるってこと?」
「……揚げ足を取るな」
「おや今口ごもった。動揺も透けて見えやすいから気を付けた方がいいわね」
「あのな――」
「と言いたいとこだけど、まぁ不確かな情報ならいいか」
「……逆にあんた達は何を知ってるんだ?」
「あなたと同じよ。襲撃者のことも被害者のことも、今朝聞いたばかりなくらい」
「そうか。それじゃあな」
「待ってよ。久しぶりに二人だけなんだから、もう少し話をさせて」
「鬱陶しいな。他に何を探ってる? 何が聞きたい?」
「大丈夫?」
「っ。」
口から、いや、喉から変な声が漏れた。
「何のことだよ」
「全部のこと。『発作』のこととか、イグニトリオ君のこととか。色んなものが重なり過ぎて、大変じゃないかなってこと」
……シャノリアが口にした「こと」は、とりあえず全部、今まさに気になっていることで。
思えば最初に出会ったこの世界の住人の一人だとはいえ、それ以降大した関わりは無い女性だった。
マリスタと違い、彼女はプレジアの教師だ。それなりに忙しかったのだろう。
だからこそ、俺とシャノリア・ディノバーツとは、とっくに「疎遠」と呼べる間柄になったのだと、勝手に思っていた。
それがこいつ、さっきから悉く俺の心中を外さず――
〝この先きっと、あなたをちゃんと理解してくれる人が現れる〟
――本当に。
いつかまとまった時間をとって、顔に出ない訓練をしよう。絶対に。




