「熱波――――炎剣乱舞」
「……炎……」
刃を炎に包まれた、テインツの剣。
「魔装剣。いかに無知でも聞いたことはあるだろう?」
「魔力を込められた剣か……しかも炎とは。俺の一番嫌いな属性だ――」
〝けいにーちゃん〟
「――反吐が出る程にな」
「…………熾きろ」
テインツの詠唱に応じ、鍔に付けられた魔石が輝く。
放たれた赤い光は刃に伝い、燃え盛っていた炎を収め――剣身から僅かに見える程度にまで抑えたようだった。
「手加減か? 油断だな。あの時もその隙を突かれた」
「ほざけよ。大見栄切るのは――もっとマシな剣を錬成してからにしろ!」
火花。
テインツが迫る。
今度は俺が応じた。
剣速を追うことは出来る。
テインツの太刀筋に、英雄の鎧で見える限り、反応出来る限り応じ、防ぎ――――だが、一向に反撃の糸口が掴めない。
武器を使い慣れないとはこういうことか。
一体どうやって奴に攻撃を――――
閃光、ならぬ閃炎。
紙一重避ける。
照りつく熱源が眼前を通過する。
大きく後退、尻餅を着きそうになって慌てて立て直す――テインツの剣が描く軌跡に、まるで残光のように炎が付いて回るのだ。
「無様だな異端。まさか知らなかったのか? 所有属性武器や魔装剣は属性や特徴を持つものがほとんどだ。貴様みたいに、ただ氷で剣の真似事をするだけのものじゃないんだよ――――そら、そらッ!!」
「ちっ」
炎が攻撃範囲を広げている。
間合いを見切れず、動きがもたつく。ただでさえ――剣での攻防にも慣れていないのに、だ。
マリスタは水。
テインツは炎。
だとしたら――
「考え事をしてる余裕があるのかよっ!!」
「ッぐ!!」
剣をいなし体勢を崩したところを、テインツの左手で突き飛ばされる。
背中を壁に打ち付け、反動で体を戻し――目の前に、残火の剣尖。
俺はまたも、詰められた。
「――……」
……いけないな。どうにも動きが固い。
剣を使うことばかりに固執してしまうが……こいつのように、体術を織り交ぜても何の問題も無い。
まったく、マリスタの奴は一体どうやって短時間であれだけの棒捌きを「どこを見てるんだよ、お前」




