「死線――――痛みすら遠のく果てに」
臓物が捩じ切れるような痛みと共に、口が血を吐き出した。
「イヤアアァァッッ!!アマセ君ッッ!!!」
誰かの声。
視線は下。
衝撃を感じた腹部。
そこに突き立っているのは――――ナイセストが持っていた湾曲剣。
「わずかに逸らしたか。心臓を一突きしたつもりだったが」
「ッ…………お前、その紋様、」
「初めてだ。精痕が発動するほどに追い詰められたのは。お前は本当に強かったよ、ケイ・アマセ――――ただ死ね」
肉が、
引き千切れる、音がした。
体から闇の刃が抜ける。
否。「抜けた」という表現は、きっと足りない。
引き抜かれたのではない。
今の動きは、
この目に映った動作を正しく表すなら、それは、
「っ゛――――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…………!!!!!!?」
腹部ヲ、ナギ抜カレタ。
真っ直ぐ突き刺さりながら、俺の身体を真横に抜けた剣。
俺の身体が、破れたフウセンのように傷口から――――オビタダシイ、血を、 吹きこぼす。
斬られた場所を、死に物狂いで両手で押さえながら倒れる。
英雄の鎧下にあるからか、痛みはそう感じない。
否。もしかすると痛覚など、とっくの昔に死に絶えてしまったのかもしれない。
だってダメだ。
これでは俺は、
流れていく、俺の全部が、
死ぬ。
死んでしまう。
声が遠のく。
視界が黒くなる。
だめだ。
だめだ。
だめだ。
だめだ。
だめだ。
死ねない。
こんなところでは死ねない。
こんな――――
〝けいにーちゃん〟
ウゴかない。
カラダがウゴか無い。
ナい。
血が止めラれなイ。
母さん。
愛依。
父さん。
オレ。
リセル。
こんなとk、ろ、で――――――
◆ ◆
「あれは……精痕ッ」
校長席でクリクターが目を見張る。
クリクターだけではない。第二ブロックに集っていた教師達全員が今や立ち上がり、有事に備えて身構えている。
基本的に、監督官が動かなければ試合の中断は出来ない。
だが今回は、既に流血を引き起こした前科のある者の試合だ。
死が容認されているとはいえ、人死にが起こらないに越したことはない。
教師たちは気を揉んでいた――――目の前の光景を認識していながら、何故あの監督官達は動こうとしないのか、と。




