「決着――――世界は終わり異世界へ」
――――ありったけの光弾が、闇を光で埋め尽くす。
体中に光の弾丸を浴びて吹き飛ぶナイセスト。
常人にとっては、何のことはない弾丸の掃射。
俺も英雄の鎧の無い状態で、魔弾の砲手の連射を耐え抜いたことがある。
だが奴は違う。
〝常人の数倍の力で血を押し流す心臓と、その血圧に耐え得る強靭な血管〟
奴の身体は、魔法の発動に常人の倍以上の魔力出力を必要とする、闇属性に耐える為の特別製。
そこに、まったく逆の特性を持つ光属性を撃ち込まれれば。
〝血流の強さはそのままに、魔力回路を通常より薄いものに挿げ替えられたら〟
「ヅ――――ァ゛ッ゛」
奴の魔力回路は自身の魔力の圧に耐え切れず――――体中で断裂する。
断末魔が、響いた。
仰向けに地へと叩きつけられたナイセストが大量に吐血し、自身の血に溺れて首を垂らす。首筋に、そして顔中に血管が浮き出ているのが見て取れる。
最早体を捩ることさえ叶わないらしく、これでは程無く迫り上がった血で窒息してしまうだろう。
――――もういい。
もうこれで、きっと十分だ。
光弾の砲手を撃ち過ぎたせいか、はたまた緊張の糸が切れたのか。崩れるままに両膝を地に着け、監督官の試合終了の合図を待つ。
遠くから近付くように、歓声が耳へ甦る。
割れんばかりの大歓声は――――少しばかり予想外だ。
あれだけ居た筈の貴族派とかいう連中は、いったいどこに消え――――
――――――――やたら遅いな。判定が。
◆ ◆
「……言ったろ、アマセ。お前さんは、『ティアルバー』を相手にする意味がまるで解ってねぇってよ」
◆ ◆
「――――――――――――」
刺すような冷たさ。
それを感じたときには、もう遅かった。
感じたのは衝撃。正面左からの腹部への衝撃が内臓を一瞬波打たせ、ぼやけていた意識を覚醒させる。
目が開く。
眼前には、今までずっと見ていたナイセストの、
「ッ…………!!!?」
戦化粧のような、紋様が浮かんだ顔。




