「逆転――――ほくそ笑む。お前が最強だったから」
「――――…………」
……成程。
これは確かに、微動だに出来ない。
ロープの類で縛られるのとは訳が違う。
魔力によって編まれた光の筋によって、体内に不可視の杭を打ち込まれているかのように体が動かない。
見た目以上に拘束力の強い魔法のようだ。
「お前らしくも無い、つまらん幕切れだったな。ケイ・アマセ――」
魔力回路の巡りには何ら違和感はないが――どうしたことか、やはり魔弾の砲手を発動しようとしても発動出来ない。
魔法的な行動に制限がかかっている――無詠唱ならばもしかしたら、と思っていたのだが。
「――よく戦った、お前は。魔法を学び戦いを学び、たった二ヶ月でお前は俺の前に立って……だがここまでだ。何が目的かは解らんが――この世界を壊そうとした囚人をこれ以上、放っておく道理はない…………我々の使命を果たさせてもらう」
……まあいい。
今はまだ、なんとか――
「ヴィエルナと同じ所へ逝け。ケイ・アマ
……、
――?」
――この戦いは、続いているから。
『!!!!!!!????????』
驚愕の沈黙が場を打つ。
ナイセストが下を見る。
奴の身体を滴るのは、僅かに粘性のある赤い液体。
白いローブに染みが広がり、――――ナイセストはようやく、口に糸引くそれを嚙み切り、俺を見た。
見たことも無い程、狼狽した笑顔で。
〝惜しいな。最強〟
「貴様――――フフ、貴様……ッ!!」
「…………惜しかったな。最強」
――――最強が、喀血する。
体を折って咳き込み、膝に手を着いて顔を伏せる。
血痕が床に吹き散る。
ナイセストが呻いて、呻いた。
「これは……魔力切れ……!!!」
「信じていたよ。お前が完璧な最強であることを」
「……!?」
ナイセストが体を曲げたまま俺を見上げる。
俺は動けない。
「知ってたさ。この魔法が、中央にいる者を無差別に拘束すること…………だから手の届く場所に居たんだ、俺は」
「!!」
「きっとお前は俺に手を伸ばしてくると思った。すべて計画通りだ……思わず芝居も上擦ったよ。見破られたんじゃないかと肝を冷やしたが――――存外、お前の方が舞い上がっていたようだな。だから見逃した。俺の芝居は評判が良くないってのにな」
〝っっっっ!!!! 嘘だろ、こんn――――〟
「…………違うっ、」
「そうだ、違う。こんな策は、お前が魔力を切らしていることの何の説明にもならない。説明するまでもないのさ。この術を発動させたのは俺じゃない」
「――――――――――、」
「そして、きっとお前は知っているだろう。この魔法が、完全な陣を敷いていれば詠唱破棄が可能なことを――――つまり。陣の近くで、最初に術を詠唱した者が、この魔法の発動者になるということだ!!!」
「最初に、詠唱――――――」
〝機神の縛光。惜しかったな、ケイ・アマセ〟
「――――――――俺が、術者ッッ――――――!!!!」
 




