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「希望――――無謀なり、機神の縛光」




◆    ◆




 圭はうつむき、せき込むフリ(・・)をしながらナイセストをうかがう。

 ナイセスト・ティアルバーがどういうわけか自分との戦いを望んでいる(・・・・・)ことを、圭はすで察知さっちしていた。

 終焉抱き新月カファルダ・ザヴァグスに呑まれた後の、光弾の砲手(ライトバレット)による奇襲きしゅう。あれは、圭が倒れた自分にナイセストが間髪かんぱつ入れず止め(ついげき)仕掛しかけてくることを予期して練ったさくだ。



 しかし、ナイセストはたっぷりと時間をかけ、圭が自ら立ち上がるのを待った。

 結果、闇の侵蝕しんしょくに苦しむ芝居しばい早々(そうそう)に切り上げ、攻撃を手ぐすね引いて待っていた圭はナイセスト、そしてナタリーにやられたフリを見破られてしまうこととなったのである。



(……そう。だから今回も、奴はすぐに仕掛けてはこない――――そしてその方が(・・・・)、色々な意味で俺にとっても都合がいい)



 ナイセストが歩み寄ってくる音。

 圭は顔を伏せたまま口元をぬぐうフリをし、至極しごく苦しそうな表情で顔を上げる。

 ナイセストの目は圭の予想通り落胆らくたんたたえ、特にその気もなさそうに、決着のためを進めている。



 理由には皆目かいもく見当がつかない圭だったが、これを利用しない手はなかった。



(そうだ。歩み寄ってこい……俺のそばまで。陣の中央(・・・・)まで)



 スペースには依然いぜん、圭の放った魔力の残骸ざんがいが残る。



 床に散る砂粒すなつぶ

 いびつに立ち上る氷柱ひょうちゅう



 それらには、圭のこれまでの学び(・・)が込められている。



 機神の縛光(エルファナ・ポース)



 六つの魔法まほうじん起点きてんとして構成される、陣が作る円の中央に位置する者を完全に拘束こうそくする最上級さいじょうきゅう魔法まほう

 そのしばりは魔法障壁をも貫通し、どんな達人をも微動だにさせず。



 その代償だいしょうに、わずかな時間で術者から莫大ばくだい魔力まりょくを吸い取っていく――――



(あと三歩……)



 ナイセストの歩みを固唾かたずを飲んで見守るのは、今や圭だけではない。

 マリスタ、シャノリア、そしてナタリー――今この場に、そしてあの時あの場に(・・・・・・・)いた三人は、皆その他の観衆かんしゅうとは一線をかくした緊迫感きんぱくかんでスペースを見つめている。



 機神の縛光(エルファナ・ポース)がありふれた魔法であったなら、きっと彼らの他にも気付く者があっただろう。

 機神の縛光(エルファナ・ポース)呪文(ロゴス)詠唱えいしょうで発動する魔法ではないため、陣を直接地面に描く必要がある。

 最上級の拘束力を持つがゆえに、魔法陣の規模きぼも相当なもの。魔法書を見ながらでなければ、とてもではないが常人じょうじんには描けない複雑さをも持つ。



 陣自体も特徴とくちょう的で目につきやすく、更には陣の完全な維持いじ魔術師まじゅつしじゅう数人すうにんがかりでないと不可能。

 つまり、機神の縛光(エルファナ・ポース)は戦闘中に使う魔法としては絶望的に不向きなのである。

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