「驚愕――――少女の目に見えた『勝機』」
「奴は頑張った。たった二ヶ月でテインツを、ヴィエルナを、ビージを、俺を倒して、本物に近けぇナイセストとまで戦って…………だけど急ぎすぎだ。いくらなんでも体に負担をかけすぎだ」
「わ、わかんないってば!」
「土台が脆けりゃ山は崩れる。アマセはこの二ヶ月、そりゃあプレジアの中じゃあ群を抜いて成長したろう。だがその分、時間をかけて作っていない基礎力は圧倒的に不足してる。魔力、体力……持久力がもたねぇんだよ」
「……そんな。だってあいつは、ここまで十分戦って、」
「だからこそだよ。一日二日で体の疲れはとれねぇ。なのにあいつは、一日だって休まずに鍛錬して、常に誰かと戦い続けてたと聞いてる。バカが、体鍛えんのは勉強で知識つけるのと同じじゃねぇんだぞ。典型的なガリ勉思考だ」
「…………」
「疲労がたまってる。その上、瞬転や障壁を使って必要以上に動き回ってやがる。――体中にガタが来ててもおかしくねぇ。肉も骨もスタミナも、限界だよあいつは。――――そのへんの差が、じわじわ出てきてるってことだ」
「っ……!」
「…………見ろ。終わったぞ」
『!!』
ファレンガスの声が、マリスタとロハザーの視線をスペースに誘う。
スペースには――口元を押さえ、せき込む金髪の後ろ姿があった。
「……吐血か。お終いだな、本当に」
「ケイ……ケイっ、がんばれっ!! 時間だって、あともう少し――――――――、」
食堂に映された記録石の映像が切り替わると同時に。
マリスタは、言葉を切って黙り込んだ。
「……?」
ロハザーがマリスタを見る。
マリスタは驚愕に目を見開いており、やがて――――小さく、強く。溢れこぼすようにして、驚きを笑いに染めた。
「な……あンだよアルテアス、おめー……気持ちわりィな気でも触れたか? 刺激が強すぎるなら見ねぇ方が――」
「マリスタ。……何だ。何を見つけた?」
「み……見つけただぁ?」
ファレンガスが眉根を寄せる。
彼にはロハザーの問いも、マリスタの驚きもとんと検討がつかない。
「…………気付かなかったの。映像が、ずっと変な角度から映ってたからっ」
「もったいぶんな。……何だ。仕掛けてんのか、何かを」
それは二人の会話が、天瀬圭という人間を識っている者にしか成立しないものであるからだ。
「……違う。あれは……あの位置は、もう仕掛け終わってる……!!! あんたスゴいよ、ケイ……!!」
相好を崩し、目じりに涙さえ浮かべて笑うマリスタ。
ロハザーは改めて映像に目を凝らし――――ついに見えた状況に、マリスタと同じく大きく目を見開いた。
「なんだよ……あの陣は……!?」
 




