「遠近――――探す一瞬、しかし戦況は」
「……関係ないさ。一発――光弾の砲手を一発でも撃ち込めば、お前は終わりだ。ナイセスト・ティアルバー!」
装填。
魔弾の砲手の中に一発だけ光弾の砲手を混ぜ、バラバラの軌道を描かせてナイセストへ放つ。
ナイセストは精霊の壁を展開――――兵装の盾もか。
ナイセストの姿が消えた。
盾の砲手。
瞬転で一直線に迫るナイセストを正面から迎え撃ち、盾の砲手を連発。盾の弾丸を突き破り迫っていたナイセストが十三枚目で止まり、度重なる盾に耐え切れなかった物理障壁を喪失した。
即座に奴へ向け飛ぶ。
魔法障壁を展開して拳を振り被り――――奴の手前で盾を足場に跳躍、ナイセストの頭上を宙返り、距離をとって着地した。
確かに余力はない。だから作り出せ、決定的な隙を。
一手の無駄も許すな、天瀬圭――
瞬転。
物理障壁を足場にスペースを飛び回り、魔弾の砲手と光弾の砲手で動きを攪乱し、
「万策尽きたか? 動きが先程と同じ――――!!」
ナイセストの周囲にも半不可視の障壁の壁を拵え、動きを制限する。
光弾の砲手。
「フフ――――いつの間にこんな壁……!」
円筒状に奴を包んでいた物理障壁から、ナイセストが瞬転と瞬転空の組み合わせで紙一重脱する。
迫るナイセストを瞬転で躱し――――いかな闇の魔力で強化された身体能力といえど、瞬転による一瞬の超速には付いてこれないようだ――――、距離を取り続け、障壁と弾丸での隙を狙い続ける。
接近戦はこちらが圧倒的に不利。
遠距離戦が頼みの綱だ。
だというのに、ナイセストはそれを――――すべて躱し続けていく。
「……クソッ……!!」
◆ ◆
「…………地力の差だな」
「……どういうこと?」
ロハザーがつぶやいた言葉を反芻するマリスタ。
ファレンガスが疲労の色濃い小さな唸りを発し、目を閉じた。
 




