「直撃――――劣化の波動」
「上級魔法ッッ!!!」
「逃げてアマセ君ッ!!! アマセ君ってばぁ!!」
立て。
――――立て!!!!!!
「ぐっ……ぅア゛……ァ゛アッ……!!」
四肢に意識を総動員し、力を込める。
叫びに呼応し、口が更に血を吐いた。
臓物を捩じられるような痛みが腹部を襲い、堪らず頭を地に押し付けてしまう。
馬鹿が、こんなことをしている時間は――
「〝君側の下名に其の暗黒を。反旗の彼れに静かなる死を。斯の漆黒は慈悲なり〟」
――時間は、もう無い。
精霊の壁を展開。
と同時に、空気が捻じ曲がったかと思う程の魔力がナイセストの手に収束し、
「終焉抱き新月」
俺の視界を、黒で塗り潰した。
魔風のように障壁に纏わりついた漆黒。
障壁を構成する魔素の赤い網目が露わになり――闇の魔力によって結びつきを劣化させられていく。
脆い内側から、剥がれ落ちるように障壁が削られていく。
少しでも、少しでも時間を――――
精霊の壁が罅割れる。
――――絶叫。していたと、思う。
大火に立ち上る濛々とした黒煙のように、うねりながら障壁を昇っていた闇が罅を突き破り――真っ黒が、逃げ場のない俺の身体を飲み込んだ。
焼けるような痛み。
回転する視界。
耳を劈く轟音。
体内で攪拌される臓腑。
四方八方から襲い掛かる、――魔波による、圧迫。
体の自由が利かない。
両側から迫り出した壁に体を圧し潰されるような、逃げ場のない絶望と狂いそうな程の圧迫。
そして――――裂け千切れていくような感覚と共に、死んでいく魔力回路。
闇の侵蝕――あのとき、ヴィエルナが受けていた苦痛を、余すところなく今、俺も体験している。これほどとは――――
――――そうか。
圧迫が消える。
重力の影響を思い出した体が途端に膝を折り、壁にその身を預け尻餅を着く。
 




