「魔術――――布石もとい、布岩」
石の槍がナイセストの懐に飛び込み、
『!!!』
――魔法障壁によって切断され、先端はナイセストにぶつかって落ちた。
インターバルの終わりが、僅かに早かったか。
「…………フン、」
構わない。
本来これも――――布石の一つに過ぎない。
「致命傷だったな、今の。当たってれば」
「………………成程。何かと思っていたがそういうことか。しかし、何の後ろ盾も無い者がよく」
「可笑しなことを。後ろ盾ならあるだろう。このプレジア魔法魔術学校という、大きな後ろ盾が」
「……妙だとは思っていた。お前が俺の魔法を躱し、空中を蹴り飛んだとき――瞬転空特有の魔力の動きが感じられなかった――――解ってみれば何ということは無い。あの動き、そして見えない打撃。あれは全部……兵装の盾で成し得たことだ。信じ難いことにな」
「――――……」
◆ ◆
「あ……兵装の盾だと?」
「で――でもロハザー。兵装の盾って確か」
「ああ……兵装の盾は一度発動すると、丸い形に自分の周囲を全部覆っちまう。小さく出すとか、小分けしていくつも出すとか、そんな細かい操作は出来ねぇ、はずだ……」
「て、てことはやっぱ別の魔法……」
「そんなモンはねーよ」
「ファレンガス先生」
「じゃあ……あるんスか? 障壁を自在に操る魔法が、別に」
「ねぇってそんなモンも。魔法は元々魔力のカタマリである精霊のものだ。そんな人間に都合のいい魔法は無ェことくらい、ここまで勉強してきたオメーになら分かり切ってんだろ」
「じゃあ、アマセのあれって……」
「………………魔術」
「――――まッ、」
「マジで驚くぞ、ケイ・アマセ……あの野郎、この短期間で魔術をひとつ完成させやがったってことだ――――!!」
「え、あの、え? 魔術って、あの壁の崩壊とか、虹の眼鏡みたいな……!?」
「そう……なんスか。ホントに魔術なんですか、先生」
「だからそうだって言ってんだろ」
「う、ウソでしょ……!? だってケネディ先生! 魔術って確か、ものすごい費用と時間がかかるって――」
「そういうモンばかりでもねぇ。ゼロから作るとなるとそりゃあ莫大な費用も時間もかかるが、アマセの場合は兵装の盾をアレンジしただけだからな」
「……『アレンジしただけ』って。何言ってんスか、ファレンガス先生」




