「激突――――闇出でる、地を冒す」
閃光が弾け。
ナイセストの手が眼前にあった。
『……――!!!?』
観衆のどよめき。
眼前には怜悧な瞳。
障壁で止められたナイセストの手は、爪を立てるように開かれていて、
闇が収束する。
「『首根断つ魔宴』」
低い唸り声をあげるようにして集った闇の波動が、展開した障壁の上を滑るようにして弾け飛ぶ。
闇に覆われる障壁。消えるナイセストの姿。
首根断つ魔宴。
凍の舞踏や雷宴の台と同じ、闇属性の中級――
障壁が、震えた。
「ッ!」
瞬転。
精霊の壁を突き破り迫ったナイセストの手を紙一重躱し、障壁から飛び出す。
障壁の破片が視界に散る。
兵装の盾、精霊の壁。障壁はしばらく使えない――――
「欲深き魔手」
――漆黒の煙の中から、地を這うような詠唱。
黒い手が数多、煙を突き破る。
「――――!」
体を振って避ける。
新体操の飾紐のようにうねり迫る黒の手。
ステップを踏む如く地を断続的に飛び、壁を足場に瞬転。向かいの壁には届かない。やはり少し広い。
背後を振り返り、向かってくる一手を魔弾の砲手で――――相殺した。
尚迫り来る、顔程の大きさの黒手。
「――――七、」
爆風を迂回、折り紙のココットが閉じるようにして迫る四手。
爆風を突き破り迫る二手。
背後から忍び寄る一手。
捕捉した。
「魔弾の砲手!!」
爆音。
残らず撃ち落とされた黒き蛇は布切れのように散り散りとなり、力を失って霧散していく。
こいつには、これで対応可能――――
「『より深く』」
――――ナイセストの影から。
声と共に、更なる黒手がうねり、出ずる――――
――――数が、多い。
着地。
同時に、避ける。
「より深く」
避ける。避ける。
「より深く、より深く、」
避け――――
「より深く、より深く、より深く――――!」




