「くもり無き目で今ここに」
プレジアが揺れる。
「!?」
眩しい程の黄土の光を放つ、もう一つの魔石。
クリクターは一層強く魔力を込め、詠唱する。
「土竜の行軍」
轟音。
巨大な土塊、もとい岩石が、スペースを取り巻くように屹立した。
スペースを覆う障壁よりもずっと高い位置まで聳え立った岩山は次いで黄土の閃光を放ちながら凹み突き出で成形されていき、――光がすっかり消えてしまう頃にはそこに完全な、観覧席が出来てしまっていた。
「観覧席……」
「プレジアが世界に誇る盾の義勇兵、アルクスです。その選定がどう行われているかは、より多くの人々に知られなければならない、と私は考えます」
プレジア魔法魔術学校の学校長が、肩の力を抜いて俺達へ振り返る。
彼は、にこりと笑った。
「観覧の場くらい、提供しなくてはね――後ろのみなさんに」
背後が光る。
見ると、先程乗ってきた転移魔法陣の上には――パールゥやシスティーナ、マリスタの友人達の姿。
「アマセ君っ……!」
「アマセ君。本当に気を付けてね」
「最後まで見てるからねっ、アマセ……!」
「がんばれーっ!」
「頑張って」
「い――一応、心では応援しとくから。口に出すのは怖いけど」
「――――」
――口を開きかけた、自分がいた。
人が散っていく。
魔法陣から次々と出てくる観覧者達。
彼らは散り散りに、あるいはひと塊にそれぞれ移動し、観覧席へと昇っていく。
既に隣に、ナイセストの気配はない。スペースへ向かったようだ。
急がなければ。いつものように、無視していけばいい。
……でも。
「…………危なくなったらすぐに、避難しろよ」
『――――!!?』
――言わなければよかっただろうか。
ああ、もう。
考えたところで詮無い。
それにしても驚き過ぎな少女らを置いて、スペースへ視線を戻す。
クリクターはまだそこに居た。
「君がここへ来た時のことを思い出します」
「え?」
「あのときの君は、どこかくすんだ目をしていた。進むべき道が見いだせないまま、このプレジアの門を叩いたのだと、そう思いました」
「………………」
「ですが、今は違う……君の目は、大望を成さんとまばゆいばかりの光を放っている。そして数ある障害を乗り越え、今ここに立っている」
クリクターはが手を広げる。
そして俺をスペースへと――決戦の場へと促した。
「舞台は整いました。見せてください、あなた達の義勇の粋を」
「――――――」
……義勇。




