「ずっと残る目を振り払い」
「――っ!?」
「けなしてるんじゃないよ。『好き』は、人を掛け値なしに信用するのに十分すぎる理由さ。ただそれは、今僕が欲してる情報じゃないってだけ」
「……あなたが欲してる情報?」
パールゥが不快感を顔ににじませ、詰問口調で問う。
ホワイトローブの少年は一瞬言葉に詰まったが――やがて諦めたようにため息をつき、小さく苦笑した。
「嫌な気持にさせちゃったみたいだし、少しだけ教えるね。……僕は確かめたいんだ。彼がどういう人間か。どんな力を持ってるのか」
「…………どうしてですか?」
「んー。単純な興味かな」
「きょ、興味って……」
「さてと。となると……この学校だと、誰が一番彼のことを知ってるのかな?」
「そ……そんなの、知りま」
「あ、やっぱりアルテアスさんかな。いつでも一緒にいるみたいだしね」
「!!!」
「うん、そっちを当たってみようかな。それじゃあね、フォンさん。お大事に」
パールゥの心を見透かしたその口で「お前は圭の理解者ではない」と言い捨て、ホワイトローブの少年は去っていく。
少女はローブの裾を握り締め、悔しそうに俯いた。
◆ ◆
あれら目が、ずっと目蓋に残っている。
「…………チッ」
自分がどうしてあの場に行こうと思ったのか、未だ以て良く解っていない。
少し考えれば、奴等が俺に託そうとすることくらい、解って然るべきだったろう、間抜け。
一切合切、俺に関係は無い。
あれは奴らの手荷物であって、俺の枷でも何でもないのだ。
〝ケイ。お願い〟
そもそも勝手が過ぎる。
奴らは実に簡単に、自分の野望や信念を誰かに託そうとする。
他人を頼みにしようととする。
戦いの場では、人はいつも独りだ。
勝つときも負けるときも、一人ですべてを受け止めて前に進む。
重く、軽い、そんな場所。
そこに、どうして他人の思いまで持ち込まなければならないのか。
俺は俺の為だけに戦う。
自分の思いは自分だけで背負う。
お前達の思いを、俺に負わせるな。
「――――……」
すっかり見慣れた床面を見る。
実技試験の行われる会場の一つ上、第二十三層演習スペース。
手を上げると、着けた黒革手袋が目に入ってくる。
着けた当初と比べると、随分と革が馴染んできた。
集中しろ、天瀬圭。
「……戦士の抜剣」




