表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
333/1260

「房の外、傍観」




◆    ◆




 第二層だいにそう救急きゅうきゅう治療室(ちりょうしつ)

 医務室いむしつ併設へいせつされた、平時は立ち入り禁止となっているその場所に、ロハザー・ハイエイトは両開きのドアを破壊せんばかりに押し開けた。



「外部の医療術師(いりょうじゅつし)要請ようせい完了しました!」

容体ようだいは?」

「未だ不安定。心音しんおん確認、弱化じゃっか不規則ふきそくです」

対象群たいしょうぐん固着(こちゃく)、魔法陣安定。輸血ゆけつお願いします!」

「……!」



 ……彼の眼前を、嵐のように飛び交っていく声。

 ロハザーが飛び込んできた音など露ほども気にならぬ様子で、医療スタッフたちは治療に奔走ほんそうしていた。



 まっすぐびる廊下ろうかを中心に、六つの鉄扉てっぴが存在する。

 そのうちの一つにて、ドアノブ付近に備え付けられている魔石が赤く光っているのを見て――ロハザーは、小さく息をんだ。



「……ロハザー」

「!! お前ら――っ、」



 ロハザーの耳にしっかりと届いたふるえ声。

 誰も彼もが忙しなく動き回っている中で、ただ動けず立ち尽くす集団。

 ロハザーは声の主――マリスタ・アルテアスの両肩をがしりとつかんだ。



「ヴィエルナはッ!?」

「わ――わかんないの。中には入れてもらえなかったから――い、痛いよロハザー」

「容体は!? 意識は戻ってなかったのか、なんか見なかったのか!!」

「み、見てないったら! ちょっと、落ち着いて――」

「斬られた腕は!! ちゃんとつながる見込みはどのぐらい――」

「少し黙って、ハイエイト君!」



 めずらしい声。

 怒気どきと少しの焦りをはらんだシスティーナの叱声しっせいに、ロハザーは切迫した目で何か言い返そうとし――その肩を、別の誰かにつかまれた。

 振り返るロハザー。そこには、彼と同じく風紀委員の面々。ロハザーの肩に手を置いたグレーローブの少年が、目を閉じて首を横に振る。彼らもまた、先の試合の惨状さんじょうを目の当たりにして駆け付けたのである。



 ……ロハザーが、マリスタをつかむ手の力を緩める。

 マリスタ達のぎょっとした視線に気付き、システィーナはばつが悪そうに胸の下で腕を組むと、ロハザーから視線をらした。

 その先には、魔石の赤く光るとびら――ヴィエルナがいる治療房ちりょうぼう



「……ハイエイト君。私達は、みんなあなたと同じものを見ただけよ。…………血の海に沈む、キースさんを」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ