「起き上がる死に体」
「……生身で……!!」
圭は、生身で受けた英雄の鎧による攻撃を、今でもまざまざと思い出すことが出来る。
テインツ・オーダーガードによって付けられた傷。一撃の殴打で鎖骨を折られ、腕力に任せ後頭部を壁に打ち付られたために――――後頭骨から頭頂骨に至るまで、後頭部全体の頭蓋骨が砕けるほどのダメージを被ったのだ。
「おまけに、英雄の鎧は術者の基礎身体能力によって伸びしろの変わる魔法です。ティアルバーさんが英雄の鎧下にあるキースさんの戦いに付いていけていた所を見ると、彼も相当に白兵の鍛錬を積んでいます」
「…………!」
マリスタは、まるで自分のことであるかのように冷や汗を流している。
会場が叫喚に沸いた。
「ヴィエルナァッッ!!!!!」
悲痛なるロハザーの声。
圭とシスティーナ、そしてナタリーが処刑場を見下ろす。
ヴィエルナは――――
――スペース中央で、ナイセストに蛸殴りにされていた。
「コっ……ェげ……ッ!!!」
ナイセストの足が、少女の身体を深々と薙ぎ切る。
ヴィエルナは胃液を吐きながらスペースの端まで吹き飛び障壁に激突――酸素を全て吐き出したところに、ホワイトローブの拳を鳩尾の奥深くに突き入れられた。
ブロックに響くほど、ヴィエルナが嘔吐く。
ナイセストは殴った右でそのまま彼女の首を掴み気道を圧し潰し――身を翻して振りかぶり、喉を鳴らして咳き込んだ少女を壁面に叩き付け投げた。
「ナイセスト――おいナイセストッッッ!!!!! あんたマジで何やってんだよッッ!!」
転がり、地に伏し小さく吐血する灰。
白は眉一つ動かさず迫り、――再び顔面を鋭く蹴り飛ばした。
首を逸らせて吹き飛んだヴィエルナが、顔で地面を擦りながら止まる。
会場が、息を呑んだ。
しかし。
「………………まだ壊れないか」
『!!?』
頭から血を滴らせ。
震える四肢を奮い立たせ。
ヴィエルナ・キースは、またも立ち上がったのだ。




