表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

319/1260

「あの時の敗北を知る」



 ナイセストが、未だ方向転換のかないヴィエルナの背後へと迫り――――深く地を踏み込む。

瞬転(ラピド)予備動作よびどうさ、見抜けたのはもう一人のホワイトローブのみ。



「危ないッッ!!!」



 マリスタが叫ぶ。ヴィエルナは振り返れない。

 果たせるかな、空中でガラ空きの背を見せた灰色はそのまま白のひとりを――



 び――否。飛び(・・)かわし、背後を取った(・・・・・・)



「!!!?」



 圭が目をしばたかせる。

 観覧席の誰もが瞬間言葉を失い、思い出すようにして悲鳴のような歓声かんせいをあげる。

 トルトがうなり、ペトラが笑った。



「うお、瞬転空(アラピド)かよっ」

「それも二連にれんで――!」



 ヴィエルナが迫る。ナイセストは、



 ――ナイセストも、飛んだ。



「?!??!??」

「え、え、え――――」



 エリダとマリスタがひたすらに眼球を動かす。

 上へ飛んだナイセストからの一撃を回避すべく、ヴィエルナがまた空をる。

 超速ちょうそく滑空かっくうしていくヴィエルナを追い、ナイセストもまた空気を足場に追いすがる。



「…………!、?」

「んんー?? どうなってんの? キースさんもティアルバー君も消えたよ??」



 まるでそこに地があるかのように乱れ飛ぶ灰と白。

 画面越しの常人じょうじんには、目で追うことすらすでに叶わぬ。



(――――なんてこった)



 英雄の鎧(ヘロス・ラスタング)の使える圭でさえ、その速度を――中空ちゅうくう瞬転(ラピド)瞬転空(アラピド)連続使用による超速戦闘ちょうそくせんとうを途切れ途切れにしか追いきれない。



「んぎゃぁっ!!?」

「し、シータっ!?」



 突如とつじょ眼前で鳴った叩きつけるような音にシータがひっくり返る。

 システィーナは、眼前の障壁しょうへきを足場に再び飛んでいくヴィエルナの姿を一瞬(とら)えた。



 同様の音が、障壁のいたるところで鳴り響く。

 それが障壁を足場にみだぶ灰と白であると観衆かんしゅうが認識し始めた時――――スペース中空ちゅうくうから弾け飛んだ音と衝撃しょうげきが観覧席に襲い掛かった。



「……押し切れ。もうそのまま押し切れ、ヴィエルナッ……!!」



 ロハザーが拳を握りめる。

 スペース中央のくうで、超速でぶつかり合う両者のこぶし

 空気を引き裂く速度で繰り出された拳同士の激突はしかし、魔装具まそうぐとして完成された籠手ガントレットを身に着けたヴィエルナに軍配ぐんばいがあがっていたのだ。



 ナイセストが拳のぶつかる力場りきばから弾け飛び、何とか障壁に着地する。

 立て直す間を与えず、ヴィエルナの拳が迫る。



 改めて。



(……やっぱり俺は、あいつに勝ててなどいなかった)



 圭は改めて、これまでずっとヴィエルナ・キースという少女に手加減されて(試されて)いたのだと、実感せざるを得なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ