「意外」
「…………ん? えっっっ。えっ?」
マリスタが素っ頓狂な声をあげる。
彼女に組み付いていたエリダがぎょっとしてマリスタを見た。
「うわっ。な、なんなのよ急に。自分の頭の悪さに気付いたの?」
「うっせぇわよ。ギャグやってんじゃないの! あれ見て!」
マリスタの指を追う一同。
スペースには、既にロハザーの姿はなく――ちょうど、ヴィエルナ・キースが中へと入ってきたところだった。
ヴィエルナを認めたエリダとシータが、視線を再びマリスタに向ける。
マリスタの驚きを察したシスティーナがポンと手を打ち、ナタリーは目を細めながらスペースを見た。
「へぇ。戦うのですね、キースさん。ナイセスト・ティアルバーと」
『えェっッ!?!!!?』
何故かマリスタも混じり、再度頓狂に叫ぶ三人。
「そ、そんな……だって私始まる前にティアルバー君相手の時は棄権しようって伝え……あれ!!?」
「も、もうちょっと後で言うつもりなんじゃ――」
「棄権の宣言はスペースに入る前が自然ですよ」
「スペースに入ることそのものが、戦意の現れ……ってことになるわよね」
「えええええ!?!??!! せ、戦意のあらわれって、そんな――って」
マリスタの視界の端で、人混みが割れる。
吸い寄せられるようにそちらを見るマリスタ達を見ることもなく――ゆらりと現れたケイ・アマセは、スペースと観覧席を分ける柵に手を置き、スペースへと視線を下ろした。
『………………』
「……ウッザいですねぇ、ホントに」
ナタリー以外が固まる。
それもそのはず。ケイ・アマセは誰が見ても解るほどに――近寄りがたい、張り詰めた空気をまとっていたのだ。
「ケ……ケイ?」
それでもやんわりと話しかけてみるマリスタ。ナタリーがため息を吐く。
圭はやや時間を置き、据わった目でマリスタを見た。
「……お前怪我は? こんなところにまで押しかけて何の用だ?」
「え、いや、……私達のいたトコに来たのは、ケイのほうなんですけど」
「何? ………………」
「……は。ハロー、アマセ君」
「………………………………………………」
「…………いやいや何事も無かったかのように視線をスペースに戻さないで戴けます? 何が『押しかけて』ですか不当です土下座してくださいマリスタに」
「な、ナタリーいいから。私は」
(アマセ君今完全に周り見えてなかったわね……かわいい……)
(アマセ君て実は天然なのか……? あれでごまかせてるつもりなのかしら)




