「リトル・シータの本意」
貴族と「平民」の騒動、その元凶と言える二人――ケイとナイセストが存在するブロック。
更に一回戦敗退が濃厚だと言われていた「異端」は今や、実力者である風紀委員を二人も――誰も予想だにしなかった速さと、結末で――打ち負かし、ナイセストに先んじて決勝のカードに座している。
ホワイトローブとレッドローブの戦い。
そんな突拍子もない未来が、いよいよ現実味を帯びて目の前に現れた――――事ここに至り、プレジアに在籍するすべての人が彼らの対戦に興味を持つのは、時間の問題となっていたのである。
「まったく、つくづく俗な連中です。何か他にやることがないのでしょうか」
「気楽なもんだわよね。貴族でも『平民』でもない、当事者じゃない人たちはさ」
「気が合いますねぇっ。やはり私達は同族なのですねシータっ☆」
「同族嫌悪って知ってるかしら? あんた」
「う、うーん。私も一応当事者じゃないけど……その話については同意かな。野次馬が過ぎると思うわ、私も――そんな単純な話じゃないのにね」
言いながら、エリダにヘッドロックを決められているマリスタを見るシスティーナ。
状況に付いていけないエリダを置いて、マリスタは――スペース出入り口でヴィエルナと何やら話しているロハザーを見て、小さな笑みを浮かべていた。
システィーナも胸を撫で下ろすようにして、小さく笑った。
「…………すごいな。ハイエイト君は」
「……シータ?」
システィーナに釣られマリスタへ、そしてスペースのロハザーへと視線を移したシータがポツリと言う。
システィーナは問いかけながら、彼女が今朝食堂で起こしたトラブルを思い出した。
「私は……あんな風に、すぐには変われなかったから。今朝だってあの調子だったし。……ほんと、妬ましいくらい」
「変わろうと思えばすぐ変われるわよ。シータなら」
「え……」
スペースを見下ろしながらシスティーナ。
シータが怪訝な顔をし、やがて顔を険しくしてうなだれた。
「……変にフォローしなくていいわよ、ありがと」
「フォローしてるつもりなんてないわ。だってもう、答えが出てるじゃない。あなたは」
「え……」
「言ったじゃない、あなた。『妬ましい』って」
「……そ、それが」
「変わりたいと思ってるなら、変わるのなんて一瞬。そう思わない?――――いい機会だから、ここらでひとつ、言葉にしてみたら?」
ポカンとするシータ。
ニコリと笑うシスティーナ。
シータは唇をへの字に曲げながら、居心地が悪そうに視線を逸らし、
「……………………変わりたいな。私も」
そんなことを、言った。




