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「Interlude―91」

「終わったねー!」

「お疲れっ、ケイベル! 最後の上級魔法、シビれたよ! 狙い方もタイミングもバッチリだった!」

「たぁ~リリスちゃんっ!! 惜しかったねーマジで! 俺絶対勝ったと思ったもん!」

「いや! むしろ歌って踊れるリリスちゃんが圧勝だったね! 不戦勝だったね!」

「ちゃんと戦ってますし、負けは負けですから。相手の技量が上だった、というだけです。これを活かして次にのぞみますよ」

「謙虚な姿勢もステキッ! サインちょうだいっ」

「コラっ! 抜け駆けはダメよっ」



「『それでは、これにて第一ブロック、一日目すべての試合を終了とします! 事前に配付された資料をよく読んで、二日目に備えてください! 各自解散!』……っと」



 観覧席の端にある一際ひときわ高い円柱から飛び降りたシャノリアは、金砂きんさのような髪をたゆたわせ、同じ姿勢でり固まった体を伸ばしながら辺りを見回す。

 どのブロックも試合は終盤なようで、それなりの盛り上がりを見せている――試験の趣旨しゅしとはまた違った盛況ぶりではあるが。



 そんなことよりも。



〝俺の家は「無限むげん内乱ないらん」ですべてを失った〟

〝二十年前まではまだ、貴族制度きぞくせいどほうとして残ってた時代だ。親父はそれを、必死で守ろうとした〟



 シャノリアが気になっているのは、第二ブロックの試合だ。



 気合や悲鳴など、戦いの声が聞こえてきたなら、まだいい。それならば、シャノリアにはある程度試合の内容も想像がつく。

 だが、圭とロハザーの居る第二ブロックから聞こえてきた声は――



〝――そして母さんは死んだ。俺を生んだことが原因で〟

〝気付いてるだろそのくらい。何をどう考えれば『平民』の連中をしいたげることが貴族の格を守ることにつながるんだ〟



(あんなのは声じゃない。もう完全に「言葉」じゃない)



 十五分という制限時間がある以上、対戦する者達は原則として、戦いの手を休めない。

 実技を見るための試験だ。戦わずにいる時間が増えれば、それはそのまま評価される行動が減ってしまうのと同義どうぎということになる。

 無論むろん、時間稼ぎのための会話だと判断されれば大幅減点の対象にさえなる。

 実技試験においては、いかなる会話もリスキーであると言わざるを得ないのだ。



〝……覚えてるだろう、お前も。テインツの、あのザマを〟

〝お前は、いやお前達は、『大切だから守っている』わけじゃない。『怖いから従っている』だけなんだよ〟

〝ロハザー。お前の戦う理由はなんだ?〟



(だってのに、あの子たちときたら!)

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