「屈服の言い訳」
◆ ◆
――ロハザーは、静かに語りを終えた。
「………………」
「……守らなきゃいけねぇだろ。勝ち続けなきゃいけないだろ。貴族で居続けるために、これからは俺も親父と同じものを背負って立つために!! 『平民』を差し置いたって守らねぇといけねェだろッ!! 違うかッ!?」
「…………違うな」
「!」
立ち上がる。
長話の間に、体の電気はとっくに抜けてしまっている。
一体どれだけの時間を浪費してしまったのか。
〝ずっとずっと、おれがまもるよ。父さんも母さんも、メイも!〟
早く決着を付けなければ。
「御立派なことだ、尊敬するよ」
「……何?」
「つまりお前にとって……家族を守ることと、他人を貶めることは同義だと。そう言ったのか」
「…………結果的には――」
「結果的にだと? 笑わせるな。少なくともお前達貴族クラブの奴等がやっていたことは、『守る』ことには何ら繋がりはしない。他人を貶めなければ守れないものなんて、守ること自体が間違っている」
「っ、」
「気付いてるだろそのくらい。何をどう考えれば『平民』の連中を虐げることが貴族の格を守ることに繋がるんだ」
「……それが世界の在り方だからだ。いつかも言ったはずだぞ。強いものが弱いものを――」
「その『在り方』を作ったのは誰だ?」
「…………作った、って」
〝四大貴族、ナイセスト・ティアルバーが俺達に話した言葉だ〟
「……そうだ。ナイセスト・ティアルバー……今のプレジアに、風紀にその言葉を浸透させているのは奴だ。そして奴は、魔波一つでグリーンローブを失禁させるような、――テインツ・オーダーガードの家族にまで悪影響を与えられるような、そんな力を持った四大貴族の一だ。……覚えてるだろう、お前も。テインツの、あのザマを」
「………………」
〝あ……あああああ!!!!!! すみません、すみません!! 待ってください、話を聞いてくださいっ! 離せ――離してくれっ! 頼む、頼むからどうか、家族だけは……家族だけはっ!!! ティアルバーさん、ティアルバーさん!!!!!!!!〟
「……あの様が『大切なものを守っている』人間に見えるか?」
「…………何が言いたい」
「なんて顔してる――もう解ってるんだろう? お前は、いやお前達は、『大切だから守っている』訳じゃない。『怖いから従っている』だけなんだよ。『守る』、『大切』なんて聞こえのいい台詞で、チカラに抑え付けられている現状から目を背けてな」
「…………ふざけんなよ。俺は本当にナイセストを尊敬してんだ、あいつの、」
「圧倒的なチカラをか?」
「――――――」
「……もう一度聞くぞ、ロハザー。お前の戦う理由はなんだ?」
「俺が戦う……勝ち続ける、理由は……」




