あぁ、私死んだのか
ズルズルと音がする。背中が痛い。
引きずられてる? なんで? 早く目を開けなきゃいけないけど体は全く動かない。
一瞬の浮遊の後、ドサッ! という音がして同時に背中に痛みが走る。
投げられた? と、いうか痛いんですけど。
身体が慣れてきたのか、ようやく目を開けると、そこは薄暗い洞窟のようだった。
ここはどこなんだろ? もしかして、誘拐されたとか?
高い天井、光源らしいものが見当たらない、洞窟内。
幾つかの可能性を思い浮かべながら、ようやく動けるようになってきた身体を動かしてみる。
あれ? なんだろう、この細い緑色の棒は?
……腕?
動かしてみる。
指が思った通りに動く……。
つまり、これは私の腕らしい。
アッハッハッハッハッ……って、そんな馬鹿な!?
名前が白亜なのに身体が緑色とはこれいかに!?
いや、待て。
緑色の肌、妙に小さい身体。
これ、もしかしてゴブリンなのでは!?
というか、ゴブリンだとしても小さすぎないか?
(なんで私こんなことに……あいつこんなこと言ってなかったじゃん……)
▼▼▼
「ふぁ……ねむ……あ〜。十二時かぁ、今から学校行ってもしょうがないよね。二度寝しよ……」
時計で時刻を確認した私は独り言で自己弁護すると、そのまま布団に潜り込み、優雅に二度寝に興じようとした。
その時───ふとカレンダーが目に入る。
「チェックしてた美少女ゲーの発売日じゃん!?」
土日での昼夜逆転の生活が祟り、日差しにHPを削られながら、なんとか目的のゲーム屋に辿り着く。
目的の物を手に入れた私は、買ったゲームを早くプレイするために、信号が赤から青に変わったのを確認し、横断歩道を急ぐ。
そして──。
「ん? なっ!?」
次の瞬間に見たのは、間近に迫ったトラックと居眠りしている運転手。
音は聞こえていたが、まさか止まらないとは思わなかった。
そのせいで反応が遅れ───鈍い衝撃音と同時に、私の身体は宙に浮いた。
そして次の瞬間、ドサリと地面に落ちる。
急ブレーキのような音が鳴り、誰かの呼ぶ声と気配がした。
全身が痛い───気がする。
もう───痛みは、あまり……感じない。
「あぁ、ショップ特典のタペストリーが────」
こんな状況でも、自分の血に浸かったタペストリーが気になる。
そしてそのまま───私は意識を手放した。
▼▼▼
目を開けると、そこは真っ白な空間。
床も壁も天井もない。
ただ、白いだけの場所。
そして目の前には、やたら神々しい雰囲気を出した美女が立っていた。
『ようこそ、士道白亜さん。まずは落ち着いて聞いてください。貴女は先ほど、トラックに撥ねられて死亡しました』
「あぁ、私死んだのか」
『ずいぶんとまあ、素直にご自身の死を認めましたね。普通こんな状況をすんなり認められる人間は稀ですよ』
「まあ、そうだろうな。とは言えキッカリ記憶にあるし否定も無理だろ」
痛みから何から全部記憶に残ってるもん。
美女は一瞬だけ言葉に詰まり、気を取り直したように咳払いする。
『まあいいでしょう。改めまして私は女神です』
「えぇ〜」
『えぇ〜とは、なんですか!?』
「まあなんだ。そこまで言うならせめて、チャンスをあげます。とか、言ってみろや。自称女神」
『そこまで言いますか!? それにそういう話はこれからしようと───』
「えっ!? 本当女神様?」
『変わり身が早い!? プライドとか無いんですか!?』
「ない! 貰える物はなんでも貰う。それが私!」
『身も蓋も無いこと言いますね。ある意味清々しいですが』
この女神、意外に乗りが良いな。
『え~、オホン、それでは色々と脱線しましたが本題に入ります。まずは───士道白亜』
咳払いした女は個人情報をペラペラと挙げ連ね、仕舞いには笑いながら『なかなかに自堕落な生活してますね?』なんて言ってきた。
うるさいよ!?
女神→笑いを堪えきれず爆笑中。
私→今なら怒りだけで駄女神を撲殺出来そうな予感。
『あ~、笑った』
さて、やはり殴ろうかこの駄女神。
『まぁまぁ落ち着いて。そんな可哀想な最期を迎えてしまった貴女に異世界転生の権利をあげます』
私の殺気の籠った目を見た女神は、冷や汗を垂らしながらそんな事をのたまわった。
と、いうかなんて言った?
『貴女が転生の権利を得た世界の名は【アースガルド】剣と魔法のファンタジー世界です! レベルとかもありますよ』
何故か駄女神がドヤ顔で説明している。
『細かい事情は興味がないでしょうから置いておいて。貴女には特典としてスキルポイントを2000とチュートリアルを差し上げます』
「因みに、そのスキルポイントってどんな基準で決まってるの? 後、チュートリアルって?」
『基準は色々ありますが、生前の行い等で決まります。大体の平均は500ポイントくらいですね』
平均の4倍と……さすが私、日頃の行いがやはり良かったらしい。
『いえ、貴女の場合は生前の行いが100ポイントくらいですね。私が作った爆笑ポイント、略してBPです。貴女の場合、1900ポイントはこちらのBPによる加算ですね』
こいつマジで殴りたい。
『良いじゃないですか。そのお陰で大量にポイントゲット出来たんですから』
……絶対こいつの顔面殴ってやる。
『後、チュートリアルは自分が生まれた場所と状況の簡単な説明を脳内でしてくれます』
「それ、なんの意味があるの?」
『自分が生まれた場所や、周辺の状況について、頭の中で説明を求めれば答えてくれます。それではスキルを選んで下さい』
ふーん、まぁまぁ便利そうだけど、そんな事よりスキルスキル。
おっ、色々ある。でも5000ポイントか全然足らない。
逆にチート物お約束の【鑑定士】
スキルは……100ポイント? 少なくない?
『あぁ、スキルは個人の資質でポイント決まってますから、人によって獲得するためのポイントが違います。物によっては自力で取れる物も有りますよ』
なるほど……おっ、このスキル【喰吸】まさか、あの小説によくある、魔物を喰えば喰うほどステータスやスキルをゲット出来る系の能力か?
【喰吸】
食べた対象の能力・スキル・特性を一部吸収する。
ただし、吸収できる内容は対象・相性・熟練度によって変化する。
おお、やっぱり合ってた。しかも1900ポイントってマジか。
これは確実に私に【喰吸】と【鑑定士】を取れと神が言っている。
『いや、私何も言ってませんよ。本物の目の前で勝手に神託受けないで貰えません? そのスキルで良いのなら頭の中で取得したいと念じて下さい』
うるさいなこの駄女神様。それはそうとそうやって取得するのか───欲しい欲しい。
【喰吸】【鑑定士】合わせて2000ポイントです。取得しますか?
おお! 頭の中で声がする。
もちろん、はい。
【喰吸】【鑑定士】取得しました。
『これで全て終了です。では、新しい人生の異世界ライフを頑張って生き抜いて下さい』
このスキルがあれば、第二の人生は楽しくなりそうだ。
そう、この時の私はまだ知らなかった。
転生先が、人間でも、エルフでも、獣人でもなく。
ステータス最低。
戦闘力ほぼゼロ。
同族からは使い捨ての奴隷扱い。
寿命三十日の最弱種族───ミニゴブリンだということを。
▼▼▼▼
(こんなのどうしろと?)
呆然としながら自分の腕を眺めていたその時、洞窟の奥から足音が聞こえた。
ズル、ズル、と何かを引き摺る音。
私は息を止める。
暗がりの向こうから現れたのは、今の私より何倍も大きい、醜悪な緑色の化け物が獲物である猪の死骸を運ぶ姿だった。
「ギギッ」
……いやいやいや。これ、異世界ライフどころか生きていける気すらしないんですけど!?
白亜&女神によるあらすじ×嘘予告 ☆
「私、士道白亜は慎ましく健全に生きる女子高生だった」
『学校サボってエロゲ買いに行った帰りに死んだんですよね』
女神うるさい。
「そんな私が異世界転生! チートスキルを手に、世界を救う旅へ!」
『いや、タイトルからして貴女の転生先ミニゴブリンですよね?』
「次回───魔法戦記白亜ちゃん! 英雄、爆誕!」
『タイトル詐欺!?』
〈と言う、漫才は置いておいて。次回───〈どうしてこうなった〉です〉
「『あんた誰!?』」
〈次回になれば分かります〉
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新しい挑戦。ラブコメ始めました。良かったらこっちも読んでください。普通のラブコメとはちょっと違う……と思う
クラス一の美少女は主人公が嫌いで、ハーレムラブコメ被害者の俺と友達になりたがっている
── クールで近寄りがたい“真白”が、なぜか俺に「友達になってください!」って?
モブ男子×美少女のじれ甘青春ラブコメが今始まる。
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