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Notice

放課後。


 


教室の空気は、少しだけざわついていた。


 


 


唯は、いつも通り席に座っている。


 


 


何もしていない。


 


 


でも。


 


 


前と同じじゃない視線が、ある。


 


 


 


小さな声。


 


 


笑い。


 


 


名前は出ない。


 


 


でも。


 


 


わかる。


 


 


 


「ねえ」


 


 


すぐ後ろ。


 


 


 


椅子を引く音。


 


 


誰かが、近づいてくる。


 


 


 


「さっきのさ」


 


 


軽い声。


 


 


 


「やっぱあれ、唯だよね?」


 


 


 


止まる。


 


 


でも、振り向かない。


 


 


 


もう一人。


 


 


 


「ほら、この動画」


 


 


 


スマホを見せる音。


 


 


 


画面は見えない。


 


 


 


でも、わかる。


 


 


 


 


「ユイ、だっけ?」


 


 


 


その呼び方。


 


 


現実じゃない名前。


 


 


 


 


唯は、ゆっくり振り向く。


 


 


 


三人。


 


 


 


真ん中にいるのが、投稿主。


 


 


 


目が合う。


 


 


 


少しだけ、笑っている。


 


 


 


「……なに」


 


 


 


声は、いつも通り。


 


 


 


 


「やっぱ本人じゃん」


 


 


 


くすっと笑う。


 


 


 


 


「すごいね、ああいうのやってるんだ」


 


 


 


 


周りも、小さく笑う。


 


 


 


 


「結構バズってるよね」


 


 


 


「ね、見た見た」


 


 


 


 


軽い。


 


 


 


でも。


 


 


 


笑い方が、少しだけ意地悪だった。


 


 


 


 


「恥ずかしくないの?」


 


 


 


 


一瞬だけ。


 


 


 


静かになる。


 


 


 


 


前なら。


 


 


 


言葉が出なかった。


 


 


 


 


逃げていた。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


唯は、相手を見る。


 


 


 


 


「……別に」


 


 


 


 


それだけ。


 


 


 


 


間。


 


 


 


 


「楽しいし」


 


 


 


 


短く、付け足す。


 


 


 


 


三人の空気が、少しだけ止まる。


 


 


 


 


「え、でもさ」


 


 


 


投稿主が、少しだけ前に出る。


 


 


 


 


「結構いろいろ言われてるじゃん」


 


 


 


 


「気にしないの?」


 


 


 


 


 


唯は、少しだけ考える。


 


 


 


 


ほんの一瞬。


 


 


 


 


それから。


 


 


 


 


「見てないから」


 


 


 


 


それだけ言う。


 


 


 


 


「……え?」


 


 


 


 


「見ても、意味ないし」


 


 


 


 


声は変わらない。


 


 


 


 


静か。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


逃げていない。


 


 


 


 


 


取り巻きの一人が、小さく笑う。


 


 


 


 


「開き直ってる感じ?」


 


 


 


 


唯は、少しだけ首を傾ける。


 


 


 


 


「……そうかも」


 


 


 


 


否定しない。


 


 


 


 


 


「でも」


 


 


 


 


一拍。


 


 


 


 


「別に、隠すつもりないし」


 


 


 


 


それだけ。


 


 


 


 


 


沈黙。


 


 


 


 


 


さっきまでの軽さが、少しだけ崩れる。


 


 


 


 


投稿主が、視線を逸らす。


 


 


 


 


「……ふーん」


 


 


 


 


それ以上、続かない。


 


 


 


 


 


「行こ」


 


 


 


 


取り巻きが言う。


 


 


 


 


三人は、そのまま離れていく。


 


 


 


 


 


唯は、動かない。


 


 


 


 


しばらく、そのまま。


 


 


 


 


 


それから。


 


 


 


 


小さく息を吐く。


 


 


 


 


 


手は、震えていない。


 


 


 


 


 


「……別に」


 


 


 


 


もう一度、呟く。


 


 


 


 


 


頭の中に。


 


 


 


 


声が残る。


 


 


 


 


——来てくれた人は、みんな歓迎


 


 


 


 


ヒカリの声。


 


 


 


 


 


少しだけ、口元が緩む。


 


 


 


 


 


席に座り直す。


 


 


 


 


 


周りの声は、まだある。


 


 


 


 


でも。


 


 


 


 


前ほど、届かない。


 


 


 


 


 


スマホは、見ない。


 


 


 


 


 


前を見る。


 


 


 


 


 


それだけで、十分だった。


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