Prologue :Reboot
ご覧いただきありがとうございます!
初めて小説書くので拙いですが、ぜひ読んでください!
このお話は50話目処に完結目指してます、10話までは1日2話ずつ22時に公開します
コメントもよろしくお願いします‼︎
――同時接続数:1,284,773
歓声は、音ではなかった。
光だった。
空一面に広がるエフェクト。
無数のアバターが生み出す色彩。
コメントは流れるというより、降り注いでいた。
「――いくよ」
静かに、声が落ちる。
それだけで、世界が止まった。
ステージ中央。
ひとりの少女が立っている。
細部まで作り込まれたアバター。
光を反射する髪。
動きに一切のラグがない身体。
“女王”。
そう呼ばれている存在だった。
「3、2、1――」
音楽が始まる。
次の瞬間。
世界が、置いていかれた。
ダンス。
その一挙手一投足が、完璧だった。
リズムと一体化した動き。
物理法則を無視したような加速。
それでいて、すべてが自然に見える。
「やば」「神」「意味わからん」
コメントが爆発する。
彼女は、ただ踊っているだけだ。
それだけで。
通貨が、跳ね上がる。
――支援:¥50,000
――支援:¥120,000
――支援:¥300,000
数字が現れては消える。
それはそのまま、現実世界の口座に反映される。
ここは遊び場じゃない。
“市場”だ。
曲が切り替わる。
今度は、ゲーム。
視界が変わる。
ステージはそのまま、戦場になる。
銃声。爆発。
プレイヤーたちが次々と倒れていく。
彼女は、一度も被弾しない。
「えぐ」「チート?」「いや人間じゃない」
最後の一人を撃ち抜く。
――WINNER
歓声が、また“光”になる。
「次、いくね」
息一つ乱さない。
今度は、歌。
マイクを取る仕草すら、美しい。
音が出た瞬間。
コメントが、止まる。
声。
それは、データのはずなのに。
どこか、現実よりも“重い”。
「……」
誰も、何も言わない。
ただ、聴いている。
一曲が終わる。
数秒の静寂。
そして――
爆発。
――支援:¥1,000,000
――支援:¥3,000,000
数字が、桁を変えていく。
「ありがとう」
彼女は、笑った。
完璧な、笑顔。
――同時接続数:1,402,889
まだ、増えている。
画面の隅。
ランキングが表示されている。
1位:QUEEN
ずっと、変わらない。
そのとき。
ほんの一瞬だけ。
ノイズが走った。
「……?」
誰も気づかないレベルの、小さな歪み。
音が、ほんのわずかにズレる。
彼女の動きが、0.1秒だけ遅れる。
次の瞬間には、完全に戻っている。
「気のせいか」
誰かがコメントする。
流れて、消える。
彼女は、何事もなかったように続ける。
完璧なまま。
――ただ。
その目だけが。
ほんの一瞬だけ。
どこか遠くを、見ていた。
配信が終わる。
歓声は、徐々にフェードアウトしていく。
光も、消えていく。
誰もいなくなったステージに。
彼女だけが、残る。
「……はぁ」
初めて、息を吐いた。
完璧だった存在が。
ほんの少しだけ、“人間”に戻る。
視界の端に、数字が浮かぶ。
――本日の収益:¥87,532,000
現実世界へ送金されます。
「……別に、いらないんだけど」
小さく、呟く。
誰もいない空間で。
彼女は、ゆっくりと座り込んだ。
静寂。
ふと。
ログの一部が、目に入る。
――接続ログ:異常検知
――再構築処理:一部失敗
「……なに、それ」
指を伸ばす。
触れた瞬間。
ノイズ。
一瞬だけ。
知らない景色が、よぎる。
雨。
誰かの声。
小さな、何か。
「……」
すぐに消える。
「……気のせいか」
同じ言葉を、彼女も呟いた。
ログは、何事もなかったように消える。
ランキング1位。
絶対的な女王。
その世界は、完璧に回っている。
――まだ。




