ドグマの冬支度
十二月に入って、ドグマが珍しいものを持ってきた。
花だった。
白くて小さい、冬の花だった。
「シルヴィアから頼まれた。ここに飾ってくれと」
「ありがとうございます」
「あいつは今日、配達で来られなかった。俺が代わりに持ってきた」
カインは花を受け取った。窓際に飾った。
「ドグマ様は、花の名前を覚えましたか」
「少しずつ覚えた。これはクリスマスローズという。冬に咲く花だ」
「そうですか。よく覚えましたね」
「シルヴィアが教えてくれた。俺が覚えるたびに、次を教えてくれる」
ドグマはコーヒーを頼んで、席に着いた。
「最近、ルーカスが花屋に来るようになった」
「そうですか」
「俺が話したら、行きたいと言って。シルヴィアも、最初は少し驚いた顔をしていたが、今は普通に接している」
「良い変化ですね」
「あの二人は、話が合うらしい。俺には合わせ方がわからない話題で、よく笑っている」
「どんな話ですか」
「冗談とか、街の噂とか。俺にはよくわからない軽い話だ」
カインはコーヒーを持ってきた。
「ドグマ様は、そういう話が得意ではないですか」
「得意ではない。真面目な話か、仕事の話しかできない」
「それは悪いことではないと思います」
「でも、あの二人が笑っているのを見ると、俺には苦手なものがあるとわかる」
「苦手なものを知ることは、良いことだと思います」
「なぜですか」
「苦手だとわかると、苦手でない人間に任せることができます。ルーカスさんが、ドグマ様の苦手な部分を補っているのだとしたら、良い関係ですね」
ドグマはコーヒーを飲んだ。
「……そういう考え方か」
「チームというのは、そういうものだと思います」
「俺はチームというものを、ほとんど経験したことがなかった」
「今、少しずつ経験しているのだと思います」
ドグマは窓際の花を見た。
白い冬の花が、ランプの光に照らされていた。
「シルヴィアがここに花を届けてほしいと言ったのは、なぜだと思うか」
「花を届けてもらうことで、ドグマ様がここに来る理由ができるからではないですか」
ドグマは少し間を置いた。
「……あいつらしい」
「そうですね」
ドグマは立ち上がった。
「来週、ルーカスをここに連れてくる。一人で来い、と言う」
「お待ちしています」
「あの子が一人で来られるか、少し心配だが」
「来られると思います」
「根拠は」
「ドグマ様に教わった子ですから」
ドグマは、低く、短く、笑った。
その笑いを、カインはちゃんと聞いた。




