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勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~  作者: 竹間単
【第五章】 美少女と、魔物の住処で性(さが)を知る

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●94


 ケイティは思っていたよりも早く戻ってきた。

 これなら夜になる前にケイティの住処まで行けそうだ。


「みなさんは、どういったご関係なんですか?」


 ケイティはちらりとエラに目をやってから、質問をした。

 どういう関係かと聞かれると……答えに困る。


「ショーンと妾は友人で、そっちの雌豚はショーンのストーカーじゃ」


「ストーカー!?」


「うん、否定は出来ないわね」


 ストーカー呼ばわりされたエラは、しかしストーカーを否定はしなかった。


「ストーカーもケイティの住処に入れないといけないんですか?」


 ケイティがショックを受けた様子でエラを見た。

 誰だって自分のストーカーではないにしても、現在進行中で誰かをストーキングをしている人物を、自宅に入れたくはないだろう。


「この雌豚はショーンに夢中じゃから、お前に乗り換えることはないはずじゃ」


「そうかもしれませんが、でも……そんな危険人物を家に入れてもいいものか……」


「大丈夫よ。私はショーンきゅん一筋だから。あなたにはこれっぽっちも興味が無いわ! 私のことはその辺の石ころだとでも思っておいて」


「ということじゃ。雌豚で石ころじゃから、問題ない」


 ケイティはイマイチ納得していないようだったが、魔王リディアに問題ないと言われてしまうと、これ以上は何も言えないようだった。



   *   *   *



 ケイティを先頭に、四人で薄暗い森の中を歩く。


 王である魔王リディアとストーカーであるエラを自宅に招くのは、さすがに可哀想だと思い、俺は当初の予定よりもケイティとその友人にはめちゃくちゃフレンドリーに接することを決めた。

 フレンドリーに接する、というのは、俺は本来あまり得意ではないのだが。


「旅行ということは、人間の町にも行ったんですか?」


「はい、行きましたよ」


「すごい! ケイティは追い払われるから、なかなか人間の町には近づけないんです」


 ケイティは、見るからに魔物らしい姿をしている。

 帽子を被って耳を隠したとしても、大きな羽までは隠すことが出来ない。

 そのため人間の振りをして町へ入ることが出来ないのだろう。


「ケイティさんは魔物の特徴が色濃く出てますからね」


「チャームポイントと言えばそうなんですが、人間の町に行く際にはネックになっちゃうんですよね」


「俺は可愛いと思いますよ」


「キャーッ、嬉しいです!」


 ケイティは頬を手に当てながら、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。

 仕草の可愛い魔物だ。


「そうだ! 人間の町にはアイドルがいるんですよね!?」


 跳ぶのを止めたケイティが、身を乗り出して聞いてきた。


「町にもよるけど、アイドルが住んでいる町もあるね」


「ショーン様はアイドルを見たことがありますか!?」


「遠くからなら見たことあるよ」


「わあ、いいですね! 可愛かったですか!?」


 今やケイティの目はキラキラと輝いている。

 興奮しているのか、だんだん声も大きくなっている。


「遠くからだったので、アイドルの顔はよくは見えなかったですが……歌はすごく上手かったですよ」


「へえ! やっぱりアイドルには歌唱力が必要なんですね!」


 ケイティは自身の喉を触ってから、あーあー、と何度か声を出した。


「ケイティさんはアイドルに興味があるんですね」


「はい。ケイティは、アイドルになりたいんです!」


 そう言ってケイティはくるりとその場で回った。

 ひらひらしたスカートが、ふわりと舞う。


「ケイティさんはどうしてアイドルに? 魔物の世界にもアイドルがいるんですか?」


「どうでしょう。ケイティの知る限りでは、魔物のアイドルはいません。でもケイティは、アイドルになりたいんです」


 ケイティは楽しそうな様子から一転、真面目な色を目に宿した。


「魔物の世界では、強い者が正義。だから弱い者は強い者に従うしかなくて、辛いことが多いから……だからケイティは、そんな人たちの人生が明るくなるように手助けがしたいんです」


「それでアイドルなんですね」


「はい。アイドルなら、強者でも弱者でも、等しく楽しませることが出来ますから。ケイティはそういう存在になりたいんです」


 相手が強者でも弱者でも、等しく楽しませることが出来る存在。

 きっとそういう存在が増えたら、この世界はもっと楽しくなる。

 争いの絶えない世界だが、それでも笑えるようになる。


「立派だと思います」


「えへへ。こうやって弱者のことを気にかけちゃうのは、ケイティ自身が弱い証拠なんですけどね」


 ケイティは恥ずかしそうに頭をかいた。

 しかしケイティは、恥ずかしいことなど一言も言っていない。


「弱者にだって自由に生きる権利はありますよ」


「ショーン様……!」


 ケイティは俺の手を握りながら、感動に震えている。


 こういう状況になったとき、必ず茶々を入れる存在がいる。

 魔王リディアだ。


「ショーンはおなごの前でカッコつけがちじゃのう」


 予想通り、魔王リディアがニヤニヤしながら俺のことを小突いてきた。


「ちょっ、やめてくださいよ。俺はクシューとは違うんですから!」


「………………」





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