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痛いほど解る

昼休みが終わり、午後の授業が始まってもなお嘉納さんが放心状態で机に突っ伏した姿勢のまま息を吹き返さない。


並志野が例の出来事(やつ)で加害者なのか、それとも傍観者であったかは定かではない。

嘉納さんが起きたことをありのままに話してはいないことなど解りきっている。

トラウマをありのままに打ち明けられたら、それをトラウマとは呼ばないだろう。

俺だって中学生の──同級生が自殺した出来事()の話題は思い出したくもないし、ありのままに打ち明けるなんて出来っこない。精神的肉体的に未成熟な中学生が同級生の自殺──自殺未遂に終わった一連の出来事(じけん)を目の当たりにして傷付かない人間(やつ)がどこにいる。彼女(さの)と取り巻きの連中くらいが平気であいつを嘲笑っていた。


あんな光景が幾度も繰り返されれば、正気を失う。


うんざりする。吐き気に襲われ、自身が抱いていた価値観が揺らぎ始める。


現在(いま)の俺がまさにそうだ。


あいつと似た現状に立たされている俺は、あいつの苦しみを、痛みを、命を絶つに至る考えが痛いほど解る。

嘉納と似た者同士の俺だから、理解できる。


救いたいし、救われたい......ただ、それだけを望んでいる俺らだ。


それすら、許されないというのか?




トラウマは一生共に生きていく重荷だ。重荷の重量を軽くしようと足掻くのは普通だ。


並志野を探れば、俺も彼女と共倒れなのは確実だ。


幸せはどこにあるのだろうか?





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