複雑な感情が芽生えた...ハロウィン、だった?
草加部さんがわざわざ手作りの料理を振る舞ってくれ、テーブルに並びきらない量を拵えてくれていた。
食後にはデザートを出してくれるとのことだ。
肘をつけるほどのスペースが空いてないほどに料理がテーブルにのっている。
俺らは思い思いに食べたい料理の皿に手を伸ばし口に運んでいた。
正直に言うと、ハロウィンに関連した料理ではなく二人の好物だ。
草加部さんの料理に舌鼓をうっていると、星峰さんが唐突に呼んできた。
「涼更くん」
「どうしたの?」
彼女に視線を向け、訊ねると一口サイズに切り分けたハンバーグを食べさせようと腕を伸ばしてきていた。
えっ、えっ、えぇぇーっとぉ~っ!
マジかぁぁ~~!
「はぁ~いぃ、あ~ん!」
一瞬ではあったが躊躇したのち、ハンバーグを挟んだ箸に顔を近付けて口に入れようとした刹那に視線を感じ、視線を感じるカウンター席に視線を向けると草加部さんにニヤニヤと眺められていた。
気まずくなり、口を閉じ始めたと同時に彼女から甘えた声で「はやぁ~くぅっん!」と急かされ、仕方なくハンバーグを口にいれざるをえなかった。
ううぅぅぅ......恥ずかしかったんだけど、めっちゃハズいぃーっ。
今度訪れた日とか、からかわれそうなんだけどぉ~っ!
ひぃ~やあぁぁ~~っ!これはさすがにからかわれる未来しか見えないぃ~よぉ~!
「照れることないじゃんかぁ~涼更くぅ~んっ!」
俯くままに咀嚼する俺に上機嫌な弾んだ声で発して、食事を再開した彼女だった。
食後のデザートを運んできた際に草加部さんはからかうことなく、かぼちゃプリンを俺らの前に置き、下がっていった。
その日は、草加部さんからからかわれることなく、喫茶店を出て、彼女を自宅まで送り届けたのだった。
複雑な感情を草加部さんに感じたハロウィンだった。




