文化祭編─文化祭二日目3~隣を歩く彼女は陽だまり
俺は、星峰さんを迎えに彼女が待つ教室へと急いだ。
心配されないように隠せているかな......表情に気を付けて、と。
カップルらしき生徒達をちらほらと見かける。そんな男女を掻き分けて、教室に。
隠しごとが上手く出来ず、表情や声音ですぐバレてしまうのが困るんだよな。
教室に到着して、閉まっている扉を開けて、教室内を見渡す俺。
「おはよう。涼更くんっ......て、息を切らして誰かに追われてたの?」
微笑みながら挨拶をした後、疑問に思ったことを訊いてきた彼女。
「いやっ、違っ......はぁはぁ、そうじゃなくて......星峰さんに早く会いたくて」
「私も涼更くんに会えるのをまだかまだかと待ってたよっ!」
膝に手を付き、呼吸を整える俺に近付いた彼女が、背中を擦ってくれる。
幼い頃に母親がしてくれたような温かさを感じた。
陽だまりに包まれたような温かさに。
「大丈夫?行けるかな?涼更くん」
「う、うんっ!ありがとう、お陰でいつもより元気になったよ!」
「良かったぁ!じゃあ、行こっ」
満面の笑みの彼女が手を握ってきて、歩きだした俺ら二人。
彼女に心配を掛けないように......
人だかりに紛れ、文化祭を満喫しよう。
気を紛らわし、あのことを丸めてゴミ箱に投げ捨てるかのように文化祭を楽しむことにしよう。




